学校法人会計基準(学校法人財務基準調査研究会報告)

昭和45年5月2日

文部省管理局長 岩間英太郎殿
学校法人財務基準調査研究会
      
学校法人の財務基準の調査研究について
 
昭和43年7月22日以来行なってきた標記調査研究については,昭和44年7月10
日一応の結論を得て中間報告しましたが,その後,この報告について私立学校,
関係団体等から提出のあった意見を勘案して検討を行なった結果,このほど学校
法人会計基準の設定について別紙のとおり結論を得たので報告します。
 
 
学校法人会計基準の設定について
 
 会計は,学校法人においては財政の計画およびその実行結果を明らかにするた
めの不可欠な手段であり,また,法人が学校の運営について教職員,校友等関係
者の理解と協力を確保するために有効な媒体となりうるものであり、さらに,国
や地方公共団体等が,広く一般の理解と支持のもとに適切な私学振興方策を実施
するうえでの重要な情報源である。
 私立学校はわが国の学校教育においてきわめて大きな役割を果たしており,ま
た,近年における私立学校の増加および学校法人の財政の困難とその複雑化にと
もなって,上述のような会計の役割の重要性は一層高まるにいたった。しかし,
従来の学校法人の会計は,必ずしも合理的ではなく,これによっては,学校法人
の財政を正確にはあくすることが困難であり,また,著しく不統一であって,社
会の期待にこたえるような会計慣行はいまだほとんど成立していない。
 したがって
 〈1)学校法人の財政的維持に向かって会計がその機能を有効に果たすためのよ
   るべき指針を提供すること
 (2)学校法人の財政に関する情報を適切に理解するための基礎を与えること
 (3)学校法人の合理的かつ適正な会計慣行の発展を促すこと
の必要性はきわめて大きい。学校法人会計基準の設定は,これら三つを目的とす
るものである。
 前述のごとく,現行の会計実践においては,一般に公正妥当と認めうる慣行が
いまだほとんど成立していないため,学校法人会計基準は次の方法によって設定
された。すなわち,まずわが国の私立学校に共通する運営上の特質を明らかにす
るとともに,学枚法人の財政上の基本的な課題を確認し,次いで,前者の与件の
もとで学校法人が後者の財政上の課題を達成しようとする場合の会計の果たすべ
き機能を定義し,この機能に対応しうる会計の基本構造を設計し,これにもとづ
いて具体的に取引を認識し,測定し,記録し,報告する場合に,学校法人の遵守
すべき基準を設定した。
 学校法人会計基準ほ,学校法人の財政の短期および長期の維持の可能性を判断
するのに役だつ会計方法を定めてあるから,学校法人の予算はこの「基準」によ
って編成されるべきである。
 また,学校法人会計基準は,学校法人の財政のてん未を明りょうに伝達するた
めの統一的な用語および文法を定めてある。ゆえに,学校法人の計算書煩は,こ
の「基準」にもとづいて作成されるべきであり,また,学校法人の財政について
報告を求め,または意見を表明しようとする場合は,この「基準」に準拠するよ
う努めることが必要である。
 かように学校法人会計基準は,学校法人に関する重要な社会的制度の一部をな
すものであるから,学校法人に関する諸法令が制定改廃される場合,この「基
準」が十分尊重されなければならない。
 
 
〔別 紙〕
 
学 校 法 人 会 計 基 準
 
T 基楚的前提
 
1 学校法人
〔公共性]
 1.1 学校法人は,学校を運営し,目的とする教育・研究活動を遂行する。営
   利を目的とすることは許されない。
 1.2 学校法人に属する資産または学校法人自体に対しては,何人による所有
   関係も成立しない。ただし,学校法人に対する財産的請求権は正当な債権
   者についてのみ認められる。
〔自主性〕
 1.3 学校法人は,特定の資産の寄付を基礎として設立される。しかし,以後
   の運営に必要な支出とそのための資産の入手源泉およびその額とは,学校
   法人が独自にこれを決定するものである。
 1.4 学校法人は,教育に支障のないかぎり,その利益を学校の運営に充てる
   ため収益事業を行なうことができる。
[永続性〕
 1.5 臨時的な教育・研究にその活動を限定する場合を除き,学校法人は,教
   育・研究を目的とする永続的な組織体である。
[予算制度〕
 1.6 学校法人は,その諸活動の計画について予算を編成し,予算にもとづい
   て運営される。
2 財政上の課題 
[資産の保全と公正な使用〕
 2.1 学校法人は,資産の保全をはかり,いかなる収入源泉から取得した資産
   も目的事業の遂行に公正に使用しなければならない。
〔教育・研究と財政との持続的調和〕
 2.2 学校法人は,教育・研究上の要求とこれを充足する財政上の諸条件との
   持続的調和をはかり,学校法人の永続的な維持を可能にするように運営さ
   れなければならない。
 2.3 学校法人は,資金の流動性を維持し 各種の支払義務を滞りなく履行し
   なければならない。
 2.4 学校法人は,各年度における消費収支の持続的な均衡をはからなければ
   ならない0
 
U 一 般 基 準
 
1 学校法人会計
〔予算〕
 1.1 学校法人会計は,学校法人の諸活動の合理的な計画に必要な財務資料を
   提供し,かつ,予算編成を通じて計画を体系化しなければならない。
  1.1.1 学校法人会計は,学校法人の諸活動のそれぞれに必要な支出の金額
      を明らかにするとともに,これに充当する収入の源泉および金額の合
      理的な決定に役だつ資料を提供しなければならない。
  1.1.2 学校法人会計は,予算編成を通じて,学校法人の諸活動の担当部門
      の責任の範囲を明確にすることに役だたなければならない。
  1.1.3 学校法人会計は,予算編成を通じて,学校法人の各部門の諸活動の
      関係の調整に役だたなければならない。
〔実算〕
 1.2 学校法人会計は,学校法人におけるすべての収入支出のてん末を明らか
   にし,資産の保全と諸活動の実行結果の判断に役だつ資料を提供しなけれ
   ばならない。
   (注)実算とほ,実際に発生した取引を認識し,測定する事後的な会計処
     理をいう。
〔会計報告〕
 1.3 学校法人会計は,法令その他に定める会計報告に必要な資料を提供しな
   ければならない。
2 会計手続
〔会計単位〕
 2.1 会計は,学校法人の教育・研究活動と法人の営む収益事業とに区別して
   行なわれなければならない。
 2.2 収益事業の会計には,企業会計の基準を準用する。
 2.3 会計は必要に応じ,教育・研究活動と収益事業とをさらに細分して行な
   うことができる。
〔取引の認識と測定〕
 2.4 取引は,事実にもとづいてこれを認識し,金額をもって測定しなければ
   ならない。
〔永続性〕
 2.5 取引の認識,測定および報告は,すべて学技法人の永続を前提としなけ
   ればならない。
〔会計期間]
 2.6 会計期間は,4月1日から翌年3月31日までとする。ただし,会計は,
   予算および実算の必要に応じ,これより長期または短期の資料を提供する
   ことができなければならない。
〔取引の記録〕
 2.7 取引の記録は,複式簿記法によらなければならない。
〔予算と実算との対照]
 2.8 必要な時点と期間とについて,予算と実算との合理的な対照がなされな
   ければならない。
    予算と実算とは,ともに共通の会計基準にもとづかなければならない。
 
V 資 金 収 支
 
1 資金収支計算
 学校法人は,予算および実算において藷活動に対応するすべての収入および
支出を明らかにするため,資金収支計算を行なう。
2 収入支出
 資金収支計算における収入および支出は,各年度における支払資金の収入お
よび支出のほか各年度の諸活動にもとづき次年度以降に収入とすべき額および
支出とすべき額を含む。
 予算に計上されていないことを理由に収入または支出の計上を繰り延べては
ならない。
 (注)支払資金とは,現金および随時随意に引き出しうる預貯金をいう。
3 支払資金残高の一致
 前項の収入および支出の金額のうち,その会計年度において資金の収入また
は支出の行なわれない金額があるときは,資金収入調整勘定または資金支出調
整勘定を用いてこれらを調整し,収入と支出の差額を支払資金の残高と一致さ
せなければならない。
4 区分表示
 資金収支計算書は、必要に応じてその内容を適当に区分表示することができ
る。
 
W 基 本 金
 
1 基本金
 基本金とは,学校法人に帰属する収入のうち,学校法人がその詰活動の計画
にもとづき必要な資産を継続的に保持するために維持すべき金頸として決定し
た金額をいう。
 (注)学校法人に帰属する収入とは,学校法人の負債とならぬ収入であっ
   て,金銭以外の受贈額を含む。
2 基本金の内容
 すくなくとも以下の各金額に相当する収入は,これを基本金に組み入れなけ
ればならない。
(1)設立当初の寄附行為により取得した資産の額
(2)寄付者の意思により,永久に保持運用すべき特定の基金等の受贈額
(3)学校法人の目的とする諸活動の規模もしくは範囲の拡大もしくはその内容
  の質的向上をもたらすために取得した資産の取得価額またはその資産を取得
  することを目的とする金銭の受贈額
   ただし,過去において取得された資産の修繕維持および旧資産と同一条件
  による取替え更新のための支出額は含まない。
(4〉 運転資金の恒常的な所要額
3 基本金の減少
 基本金の減少は,原則として,学校法人の目的とする諸活動の一部または全
部の廃止にともなって資産を縮減した場合にのみこれを行なうことができる。
 この場合における基本金取崩額は,その縮減する資産にかかわる基本金組入額
の金額をこえてはならない。
 
X 資   産
 
1 評価の一般原則
 資産の評価は,原則として公正な取引にもとづく取得価額による。受贈によ
って取得した資産は,その資産の取得時の価額をもって評価する。
2 減価償却
 長期使用資産で時の経過にともない減価するものについては,合理的な耐用
年数による減価償却を実施して,その額をその資産の取得価額から控除しなけ
ればならない。
3 有価証券の評価
 有価証券について,その時価が著しく下落したときは,回復可能と認められ
る場合を除き,時価によって評価しなければならない。
4 徴収不能引当
 未収入金その他の金銭債権について,徽収不能のおそれがある場合は,徴収
不能の金額を見積もって引き当てなければならない。
 
Y 消 費 収 支
 
1 消費収支計算
 消費収支の均衡の有無およびその内容を明らかにするため,消費収支計算を
行なう。消費収支計算は,年度の消費収入と消費支出とを対照して計算する。
2 消費支出
 消費支出とは,学校法人が消費する資産または用役の金額をいう。消費支出
の金額は,消費する資産または用役の取得価額にもとづいてこれを測定する。
3 消費収入
 消費収入とは,学校法人が消費支出に充当しうる収入をいう。消費収入は,
学校法人に帰属する収入のうちから基本金への組入額を控除することにより,
これを算定する。
4 期間対応
 年度消費収入と年度消費支出は,期間的な対応関係において認識されなけれ
ばならない。
5 消費支出超過額
 消費支出が消費収入をこえた場合は,その超過額は消費支出超過額とする。
 当年度消費支出超過額も次年度以降の消費収入超過額をもってこれを填補
しなければならない。
6 消費収入超過額
 消費収入が消費支出をこえた場合は,その超過額は消費収入超過額とする。
 当年度消費収入超過額は,過年度の消費支出超過額の填補に充当しなければ
ならない。当年度消費収入超過額が過年度消費支出超過額をこえる場合は,そ
のこえる額の全部または一都を将来の特定年度の消費支出に充当するために留
保することができる。
 
Z 計 算 書 類
 
1 計算書類の基礎
 計算書頒は,信頼しうる会計記録にもとづいて作成されなければならない。
2 合目的性
 計算書類の種類,様式および精粗は,報告目的に適合しなければならない。
3 種 類
 学校法人会計の提供すべき会計資料は,すくなくとも以下の計算書類に要約
されなければならない。
(1)資金収支計算書
(2〉消費収支計算書
(3〉貸借対照表
(4)付属明細表
  ア 基本金明細表
  イ 固定資産明細麦
  ウ 借入金明細表
4 継続性
 計算書類の重要な項目に係る会計処理の方法または表示の方法に変更があっ
た場合は,その旨および計算書類の期間的な比較可能性を与えるために必要な
事項を,その計算書類に注記しなければならない。
5 監 査
 計算書類には,監査報告書を添付しなければならない。