学校法人委員会報告第32号
基本金に関する会計処理及び監査上の取扱いについて(その1)
制定 昭和63年10月4日(
pdf) 日本公認会計士協会
昭和62年8月31日付け「学校法人会計基準の一部を改正する省令」(文部省令第25号)が公布され,更に同日付けで「恒常的に保持すべき資金の額について」(文高法第224号,文部大臣裁定・以下「昭和62年8月裁定」という。)及び「学校法人会計基準の一部改正について(通知)」(文高法第232号,以下「昭和62年8月(通知)」という。)が公表された。
以上の改正により,学校法人会計基準(以下「基準」という。)のうち,主として基本金に関する取扱いが一層明確にされたことに伴い,基本金に関する当面の会計処理及び監査上の取扱いは次のとおりとする。
1.会計処理及び表示
基本金に関する会計処理及び表示は,昭和63年4月1日以降の会計年度から改正後の「基準」,「昭和62年8月裁定」及び「昭和62年8月(通知)」に従って行うこととなるが,昭和49年2月14日付け「基本金設定の対象となる資産及び基本金の組入れについて(報告)」(文管振第62号,以下「昭和49年2月(報告)」)に留意する。
なお,図書に関する基本金組入れについては,「昭和49年2月(報告)」の3−(2)に準じて処理することとする。
(注1)
「昭和49年2月(報告)」のうち,「2 基本金の組入れについて」の項は,「基準」第30条第2項及び第3項の整備に伴い,昭和63会計年度からは適用されないことに留意する。
(注2)
「基準」第38条第2項に定める高等学校を設置していない知事所轄学校法人に係る特例の適用(基本金明細表の作成省略規定)については,都道府県がその特例の適用をしない旨の指示を行っている場合,その指示に従うことは,妥当な取扱いとする。.
(注3)
「基準」第9号様式(第36条関係)の基本金明細表の付表として設けられた様式第1,様式第2及び様式第3を作成した場合は,「昭和51年度以後の監査事項の指定について(通知)」(昭和51年7月28日,文管振第215号)の四−2−(2)に定める計算書類の第9号様式の次に添付し,袋綴じの対象とする。
2.監査上の取扱い
基本金に関する監査は,昭和62年8月31日改正後の「基準」等に基づいて行うものとする。
なお,「基準」第30条第2項に定める基本金への組入れは,固定資産の取得又は基金の設定に係る基本金組入計画に従って行うものであるが,基本金明細表の付表に記載される固定資産の取得予定年度・所要見込総額(様式第1関係)及び基金の組人達成年度・組入目標額(様式第2関係),並びにこれらに伴う基本金組入計画については当該計画の決定方法の合理性について検証する必要がある。合理的であるかどうかは,理事会及び評議員会(私立学校法第42条第2項の規定に基づき,寄附行為をもって評議員会の議決を要することとしている場合に限る。)の議決が適正な手続によって行われているかどうかを確認する。これに関して重要な指摘事項があると認められる場合については,参考事項として記載するものとする。
(付則)
学校会計委員会報告第18号「基本金に関する監査上の取扱いについて(その1)」(昭和50年5月7日)は 廃止する。
解 説
■学校法人委員会報告第36号「私立学校振興助成法第14条第3項の規定に基づく監査の取扱い」(平成8年4月15日)により,「昭和53年度以降の私立学校振興助成法第14条第3項の規定に基づく監査の取扱いについて」(昭和53年11月7日)及び「学校法人監査に係る除外事項,補足的説明事項,付記事項及び参考事項の記載区分等について」(昭和54年6月18日)が廃止された。本報告には,これらを引用又は根拠とする部分が含まれていたため,該当する部分を変更した。なお,他は従前の内容を変更していない。
<昭和63年10月4日付 解説>
T まえがき
基本金に関する監査上の取扱いについて具体的な取扱いを述べる前に,過去の報告の経過と本報告改正の趣旨を述べることとする。
昭和48年3月23日,学校法人監査の充実を期するため,学校会計委員会報告第12号として「基本金に関する会計処理及び監査上の取扱いについて」を公表した。その後,昭和49年2月14日付けの文部省通知「基本金設定の対象となる資産及び基本金の組入れについて(報告)」(文管振第62号,以下「昭和49年2月(報告)」という。)の発表が行われたことを受けて,前記報告第12号の改訂の必要に迫られ,昭和50年5月7日,学校会計委員会報告第18号として「基本金に関する監査上の取扱いについて(その1)」と題し,当面の監査上の取扱いを発表した。この報告は主として前記「昭和49年2月(報告)」を基にした基本金に関する取扱いを示したものであるが,なお,この他に未解決な点が残されていたため,当面の措置として報告第18号を(その1)として公表したものである。
今回,本報告の本文に記載した昭和62年8月31日付けの「学校法人会計基準の一部を改正する省令」(文部省令第25号)の公布,これに伴う同日付け「昭和62年8月裁定」及び「昭和62年8月(通知)」などの一連の措置が講ぜられ,主として基本金に関する取扱いが一層明確にされたことに伴い,当委員会では,これらの改正に対応して,直ちに委員会報告第18号の改正作業に着手した。今回の報告公表は,昭和63年6月20日付で公表した学校法人委員会報告「基本金に関する実務問答集(中間報告)」の審議と併行し,文部省と協議を重ねながら作業を行ってきたものをまとめたものである。
U 会計処理及び表示について
1.会計処理及び表示上の留意点
本報告においては,計算書類の様式(第9号様式の付表も含む)が一段と整備されたことにかんがみ,旧委員会報告第18号と異なり「会計処理及び表示」の項を新設した。会計処理及び表示について留意すべき点は,以下のとおりである。
(1)昭和63会計年度以降からは,改正された「基準」等(「昭和62年8月裁定」,「昭和62年8月(通知)」を含む)によって会計処理を行い,計算書類を作成することは当然であるが,移行年度以後における監査人の適切な指導が必要とされる。なお,昭和63会計年度における会計処理及び計算書類の表示方法の変更に係る移行措置については,昭和63年10月4日付け学校法人委員会報告第33号を参照されたい。
(2)改正された「基準」等以外でも,従前の「昭和49年2月(報告)」の意義は重要であり,特に第1号基本 金対象資産の把握に当たっては,同報告の趣旨に従って判断することとなる。なお,図書の取替更新については,「昭和49年2月(報告)」3−(2)の機器備品の取替更新に準じて取 扱う旨の記載を行った。
また,今回の改正に伴い,「昭和49年2月(報告)」のうち「2 基本金の組入れについて」の項は,昭和63会計年度から適用されないことになった点に留意しなければならない。
(3)「基準」第37条に定める高等学校を設置していない知事所轄学校法人(例えば幼椎園のみを設置する学校法人などが該当)については,今回の改正基準第38条第2項により,基本金の未組入額があっても基本金明細表の作成を省略できることとされたが,都道府県において当該特例を適用せず,所轄学校法人に基本金明細表の作成を指示した場合,その指示に従うことは妥当な処理と認めた。
また,「基準」第38条第1項の定めにより,前記の高等学校を設置していない知事所轄学校法人は,「基準第30条第1項第4号に掲げる「恒常的に保持すべき資金として別に文部大臣の定める額」に相当する金額の全部又は一部を組入れないことができることに留意する。
(4)第9号株式たる基本金明細表に添付する付表(様式第1,様式第2及び様式第3)を作成した場合,当該付表は,所轄庁に提出する計算書類の袋綴じの対象となることを念のため留意事項として記載した。
2.基本金に関する会計上の具体的取扱い
基本金に関する会計処理及び表示に当たっては,「基準」等以外に昭和63年6月20日付け,学校法人委員会報告「基本金に関する実務問答集(中間報告)」(以下,「実務問答集」という。)を参考にするのが適当である。
今回,当委員会で最も論議が交され たのは,第2号基本金,第3号基本金 及び第4号基本金の組入れとこれに対応する資産との関連についての審議であった。このことについて,以下具体的に述べてみたい。
(1)第2号基本金に関わる今回の改正の意図は,固定資産の取得計画に対し計画的,段階的に組入れることの 趣旨を一層徹底したものであり,従前からの計画的組入れと本質的には変わりはない。この場合,第2号基本金対象資産として,通常の運転資金と区別し,取得目的に沿った「○○引当特定預金(又は資産)」を将来取得予定の固定資産の取得年度に至るまで計画的,年次的に留保しておくことが適当である。
(2)第3号基本金は,旧「基準」の特定基本金が該当し,運用する基金を継続的に維持し,その果実等をもって所定の事業を遂行するために設けられたものであり,第2号基本金と同様に,目標達成年度に至るまで計画的な組入れを行うこととされた。その対象資産は,例えば「○○奨学基金」など具体的な運用目的を有する基金が該当するが,資産としての記載科目は従前の「特定基本金引当資産」が「第3号基本金引当資産」に変更が行われた。なお,複数の基金を有する場合,貸借対照表上,前記記載科目により一括表示することが望ましい。
(3)第4号基本金については,今回「昭和62年8月裁定」が公布され,その算定根拠が明らかにされた。第4号基本金の算定については,従来,「運転資金の恒常的所要額の計算は,既往1年間における支払資金の平均有高を基礎にして行なう」(昭和45年12月1日文部省学校法人財務基準調査研究会報告の4)との報告がなされていたが,必ずしも学校法人の実態に即したものとは言えなかった。この点について,今回の改正は,その算定基準が学校法人の規模等に即して一層明確にされた点に注目しなければならない。第4号基本金は「学校法人は必要な運転資金を常時保持していなければ,その運営が円滑にできない。そのための一定額以上の支払資金を基本金に組入れ,継続的に保持すべきものとした」(新訂学校法人会計基準詳説,三角菅生編,ぎょうせい,81頁)との趣旨で設けられたものである。今回の改正によって,従前の「支払資金」を単に「資金」としたのは,いわゆる運転資金が「基準」第6条に支払資金(現金及びいつでも引き出すことができる預貯金をいう)のみでは,近年における多様化した資金運用の実情にそぐわないため,現預金のほかに運用資産(随時換金性及び元本保証確実性のある有価証券等)まで範囲を拡大したものである。以上の諸点から第4号基本金の対象資産としては,従前より資金の範囲を拡大した点が異なるが,学校法人の不測な事態又は円滑な学校運営のために保有していなければならないことは従前と変わりはないのである。
しかしながら,「昭和62年8月裁定」の算定基準たる資金を昭和63会計年度に留保することができない法人もあることを考慮し,未組入額たるその不足額を2年ないし3年,遅くとも5年程度以内に計画的に組入れることも認められているところである(委員会報告「実務問答集」及び添付した文部省参考資料・その1を参照)。
(4)以上,第2号基本金から第4号基本金に至るまで,「基準」の趣旨からみても,これらに相当する資産を確保することが「基準」の理念であることは言を待たない。
したがって,これらの資産についでその実在性を確認する必要がある。このうち,第4号基本金対象資産は,その資金を留保することが常道であり,しかも,資金の性格として随時換金性及び元本保証確実性のあるものでなければならない。(元本保証確実性については,第2号基本金及び第3号基本金対象資産にも要求される。)第4号基本金の恒常的に保持すべき資金については,貸借対照表上の負債との関係で,その実在性についての確認方法に若干の問題がある。負債と直接関連せず資金のみでその保有を判断するかどうかという点である。本来,「基準」の趣旨は,基本金相当額が正味財産として維持されることを期待しているのであるが,学校法人の実情は必ずしもそうなっていない。一方,資金調達の源泉たる負債の使途は,多様であり,資産側とすべて整合するものではない。このような点から,第4号基本金の恒常的に保持すべき資金は,当面,資産の裏付けがあることをもって確認せざるを得ない。このことについては,今後の会計慣行の推移と監査の実践を踏まえて検討を重ねていきたい。
V 監査上の取扱いについて
改正された「基準」は,旧基準と本質的に変わりないが,第30条第2項の整備に伴って第9号様式たる基本金明細表の付表の添付が義務付けられたことなどを考慮し,監査上の取扱いを改訂した。以下,若干の留意点に触れると次のとおりである。
(1)監査意見の形成に関しては,改正された「基準」等に従って判断することは当然であるが,会計処理及び表示に係る指摘事項が当該法人の財政状態及び経営状況に影響を与える場合,その重要性の判定によって限定意見を付すかどうかは,監査人の判断に委ねられる。その点については,証券取引法監査及び商法監査と基本的に変わりはない。
今回の改正に係る監査意見の表明については,昭和57年10月1日付け監査委員会報告第20号「正当の理由に基づく会計処理の原則又は手続の変更について」に準拠することが妥当と考える。
したがって,昭和63会計年度計算書類において,改正に伴う変更の旨の記載を行った場合,その変更は「正当な理由」に該当するものと認 められるので,監査報告書に当該事実の記載を要しないこととした(昭和63年10月4日付け学校法人委員会報告第33号『「学校法人会計基準の一部改正」に伴う会計処理及び計算書類の表示方法の変更に係る移行措置について』を参照)。
(2)基本金明細表の付表については,それが計算書類に添付されている点を考慮し,第1に様式第1の「第2号基本金組入れに係る計画表」に記載されている取得予定固定資産の種類,取得予定年度,所要見込総額及びこれに伴う基本金組入計画,第2に様式第2の「第3号基本金の組入れに係る計画表」に記載されている組入日標額,組人達成予定年度及びこれに伴う基本金組入計画について監査報告書上,どう措置するかが検討課題とされた。本来,監査報告書においては,会計年度末で終了した計算書類に関する監査意見の表明を行うものであり,将来,取得又は目標とする資産及び基本金組入計画についてまで監査意見を述べることは困難である。
そこで監査人としては,これらの計画の決定方法及び計画の積算根拠などの資料を視閲すべきであるが,それをもって計画の当否に関し正確であるとの意見表明を行うことはできない。そこで,本報告においては,付表たる「様式第1」及び「様式第2」に関する当該計画の決定方法の合理性について検証することとし,その検証方法は,理事会及び評議員会(私立学校法第42条第2項の規定に基づき,寄附行為において評議員会の議決を要することとしている場合に限る。)の議決方法が適正な手続によって行われたかどうかを確認することとした。この手続が合理的な方法によっておらず,重要な指摘事項があると認められる場合には,監査報告書上,「参考事項」として記載することが適当であるとの結論を得た。
W むすび
基本金に関する会計処理及び監査上の取扱いについては,以上の経緯からみて,今後,検討すべき課題もあり,本報告は昭和63会計年度からの適用に備えて当面の取扱いを示したものである。
最後に今回の改正に係る当委員会の作業に関し,多大なご助言をいただいた文部省担当官の方々に感謝する次第である。
(前学校法人委員会委員長 斎藤力天)