学校法人委員会研究資料第1号
        学校法人会計基準改正に伴う相談回答事例
                             日本公認会計士協会:平成19年7 月31日




 
本研究資料は、改正基準に関する実務上の問題点とその取扱いがより明確になるよう、Q&Aによりこれらの質問を中心に取りまとめたものである。

 
   
 
Q1 資産転用の場合の部門別計算
 部門別計算を行っている法人において、部門間で基本金対象資産を転用した場合、各部門において基本金の組入れと取崩しを行うのか。
 次のいずれの方法も適用可であるが、継続的に適用すること。
@ 転用は法人内部の振り替えであるので、当該資産に組入れ・取崩しの認識をしない
A 当該資産に組入れ・取崩しの認識をすることも認める。








 
筆者注:(19年8月10日・山口善久−以下同)
Q3にある通りCPA協会の基本金の考え方は
、第4号基本金を除き原則として部門別という前提に基づいて整理しているとされている。とすれば、部門別計算を行っている法人の場合には、組入れ・取崩しの対象額に含める処理を原則とすべきではないか。しかし、本Q&Aは、この処理を単に認めるとして原則処理としていない。また、基本金の部門別振り替えにも触れていない。貸借対照表には部門別計算の思考がないのであるから、基本金の部門間振り替えを回答としてあげるすべがないことはわかるが、ここで基本金の処理には基本的に部門別の思考で形成されていないことに気がついてもらいたい。当然にこの考え方がQ3に繋がることとなる。
 
 
 
Q2 部門別把握の場合における基本金明細表の記載方法
 基本金要組入額を部門別に判断している場合には、部門別に計算された金額として繰入れと取崩しの両方が計上されたとしても、法人全体の基本金明細表においてその両方を相殺して記載する必要はない。



 
筆者注:
この回答は、平成17年12月16日付け日本私立学校振興・共済事業団の学校法人会計基準改正Q&A「Q5」と同じである。なお、この事業団の回答には当該明細表の記載方法が具体的に説明されている。
 
 
 
Q3 第1号〜第3号基本金と第4号基本金の部門別組入方法の相違
                   (部門別か法人全体か)
基本金の取り扱いは、第4号基本金は原則として法人全体で、その他の号の基本金は原則として部門別という前提に基づいて整理している。
第4号基本金は、文部大臣裁定により、法人全体の消費収支計算書を基に計算されることに基づいていることから法人全体で計算することが予定されているからである。
一方、その他の号の基本金は、Q&A第16号3−7で「原則として部門別に判断することとなる」となっているからである。また、これらの記載は、文管企第250号などによる部門別計算の趣旨に基づいているからである。























 
筆者注:
本Q&Aを取り纏めるのに苦労した。Q&Aの回答を纏めるというのもおかしいが、多分上に纏めたとおりでよいのだろう?。
第1号〜第3号基本金を部門別に整理している理由を説明し、それの正当性を述べたかったのであろうがそのようにはなっていない。
Q&A第16号3−7が「原則として部門別に判断することとなる」としているからではその答えにならないし、文管企第250号などが部門別計算の趣旨に基づいているとの理由は、文管企第250号がその通りなら本回答にもなるであろうが、文管企第250号は部門別の趣旨に基づいていると解すことができるのであろうか。
文管企第250号の前身通知である文管振第93号(S47.4.26)に「資金収支内訳表の作成は,学校法人がその諸活動に係る予算の編成・管理のため各予算単位ごとに行なう部門計算とは異なるもので,これと直接の関連を有するものではない。」という記述があるように、文管企第250号などは、学校法人全体の数値が先ず存在していることを認めて、「国または地方公共団体において,私立学校に対する経常費補助の効果を具体的に把握し,教育活動の実態に即した有効適切な振興策策定のための資料が得られるようにする」ために、その部門別収支の計上・配分を求めているのである。そして、文管企第250号は、このような部門別収支の計上・配分のための計算表(部門別収支を把握するための考え方ではない)を用意しているし、日本私立学校振興・共済事業団著の実務問答集「286」ではこの配分表の収支結果を文管企第250号の趣旨からして各部門別に伝票を起こす必要がないとしている。これらを総合してみると、基準がその収入支出の部門別計上を先ず求め、そこから全体金額の算出を求めているとは理解できない。もちろん、部門別計算の積み上げで全体金額を算出することを禁じているわけではないことは述べるまでもない。そして、これらを受けてそれを現実の作業の中で如何に簡略に実行できるかを我々は工夫しているのである。
また、Q1にも述べたように基本金(の貸借対照表金額)には部門別の管理要請がない。基本金の全体計算より部門別計算優先の思考はどこから出てくるのであろうか。
 
 
 
Q4 消費収支内訳表における基本金組入額の記載方法
第1号基本金の繰り入れを法人全体で判断している場合の消費収支内訳表における記載例が次のケースに分けて示されている。
(1) 個別把握した段階でどちらの部門も組入れとなっている場合
(2) 個別把握した結果、A大学は100の組入れ、B短大には80の取崩しが把握された場合
 
 
 
Q5 第1号基本金設定対象勘定科目間の振替え
基準改正により、勘定科目間で振り替えるという考え方はなくなった。したがって、基本金明細表において振替えというような表示はせず、そのまま「××に係る組入れ」や「○○に伴う取崩し」などとして表示されることとなる。
 
 
 
Q6 第1号基本金を繰り延べた場合における資産の再取得計画
Q&A第16号3−4「除却又は売却した資産と同一種類の資産を再取得する場合に、資産を再取得するまで基本金を繰り延べる」における「再取得する」とは、基本的には、計画が必ずしも個々の資産それぞれについて詳細に具体化されていなくとも、中長期計画等に基づき将来取得(あるいは将来的に維持)する意思を機関決定している場合には「再取得する」場合に該当するとしても差し支えない。























 
筆者注:
平成17年の基準改正により基本金の維持の縛りが緩和されたが、基準の考え方は依然として基本金の維持を望ましいとしているものと考える。ということからすると、
Q&A第16号3−4の判断は、再取得することの意思を確認することでなく、再取得しないことの意思を確認するにあるのではないだろうか。
筆者注:
基準第31条は、基本金を取り崩すことができる場合を定め、第1号で「その諸活動の一部又は全部を廃止した場合」、第2号で「その経営の合理化により前条第一項第一号に規定する固定資産を有する必要がなくなつた場合」をあげている。そして、17文科高第122号部長通知は、「第31条各号に該当する場合は、資産を他に転用するなどして継続的に保持する場合のほかは基本金取崩しの対象としなければならないこと。」としている。
したがって、第1号・第2号に該当する場合は、転用するなどの計画がなければ取り崩しとなるが、第1号・第2号に該当するか否かの判定には違いがある。
第1号の場合は、諸活動の廃止、即、取り崩し。転用などの事由がなければ再取得による基本金維持はない。
第2号の場合は、経営合理化等によって除却等した場合にはその資産の再取得の有無の確認が求められることになる。そして、基準第31条は、再取得の意思がない場合には取り崩しとしている。したがって、この第2号では、再取得しないという意思表示がない限り(これには再取得するという意思表示もないことも含まれる。ということは無回答の場合も)、基本金は維持されるとすべきであろう。しかし、本問の回答では、再取得するという意思確認がない限り(これには再取得しないという意思表示もないことも含まれる。ということは無回答の場合も)、基本金は取り崩されるということになろう。
なお、
Q&A第16号3−4の事例がタイトルでは学生寮であることを承知で以上の見解を述べている。
 
 
Q7 取崩しを行う際の理事会による承認時期
Q  基本金を取り崩す場合、部長通知では「学校法人が定める適正な手続きを経ること」となっており、当法人では理事会の承認を得ることとしていますが、この「理事会の承認時期」はいつでしょうか。
A  理事会の承認は、原則的には事業計画策定時であり、今後維持しないのであれば基本金の取崩対象額に含めることを決めておくことが望ましい。
 事業計画で予定されていなかった基本金の取崩対象額の発生については、除売却などを行った際に今後継続的に維持するか否かの意思決定ができるため、そのタイミングで取崩対象額に含めることを決めておくことは可能であり、適時に方針を決議しておくことが望ましい。また、第2号基本金や第3号基本金については計画変更の決議が年度内になされていなければならず、その時点で取崩対象額に含めることを決議しておくべきであろう。
 ただし、最終的に基本金が組入れとなるか取崩しとなるかの承認については、決算理事会における基本金明細表の承認により充足されると考えられる。
 なお、事業計画の変更に伴う取崩しについても、教育水準の低下を招かないことが求められており、その趣旨に変更がないことには十分留意が必要である。








































 
筆者注:
回答にある「ただし書き」により、本回答の最終結論がどこにあるのか判然としないので、上記にQとAの全文をそのまま掲載する。そして、以下に筆者の考え方を述べることとする。
取崩しの理事会(等)の承認時期は、決算年度内である。会計は、4月1日に始まり3月31日に終わる期間内における会計事実に基づいて行われる。したがって、その会計事実の発生時期は後発事象を除いてその会計年度内であらねばならない。となれば、基本金の取崩しがその意思表示にあるのであれば、当然にその意思表示の時期は、決算年度内である。
しかし、基本金を取崩すことができる事象に理事会付議になじまないものがあるので、外部監査でこの理事会承認を確認するには、原則論だけでは解決できないことがある。その対策が本問であると筆者は推量し、以下、第31条の号ごとにそれを検討する。
第1号の取崩しは、その諸活動の一部又は全部を廃止した場合であるから、その廃止決定時期の事後確認でも、その確認できる日が決算年度内でなければならない。したがって、決算年度内の理事会等決議が必要である。これは、諸活動の廃止は例外なく確実な理事会決議を要すると考えるからである。なお、この諸活動廃止の要理事会決議の考え方は、第1号基本金のみならず第2号基本金・第3号基本金にも同様に該当する。
第2号の取崩しは、その経営の合理化により第30条第1項第1号に規定する固定資産を有する必要がなくなつた場合であるから、従来有していた固定資産の除却等、そして、その再取得の有無がここでの取崩しの決定要因である。本回答にもあるように「
除売却などを行った際に今後継続的に維持するか否かの意思決定ができるため、そのタイミングで取崩対象額に含めることを決めておくことは可能であり、適時に方針を決議しておくことが望ましい」が当然であり、回答内の決議しておくことが望ましいは、決議しておくことである。しかし、Q&A第16号3−3の経営の合理化により固定資産を有する必要がなくなった場合をみると、ケースによっては理事会等でどのように決議するのというものも含まれている。さらに、これらのケースでは現実に起きた除廃却という行為の中での取崩しであるので、仮に決算操作という意図が伺える場合でもその範囲が限定される。例えば、パソコン等の購入形式から賃貸方式への切り替えとか年度一括対応方式の機器備品の取替更新とかがこのケースである。よって、理念では理事会等の決議は第1号の取崩しと同様に決算年度内であるべきだが理事会決議の有り様に困難性があり、現実の判定は本回答にあるような「決算理事会における基本金明細表の承認」によることを認めることになろう。当然に、その根底には「決算年度内に理事会等の意思確定」があって基本金明細表が作成されていると論理展開していることはいうまでもない。しかし、ここでこの考え方を認めるには明らかにしておかなければならないことがある。基本金明細表での確認により年度内決議と推定するこの考え方は、あくまでも例外であるということである。例外であるということは、第2号に該当する事象がある場合のその金額が多額で会計判断に重要性が認められる場合には、この考え方が必ず認められるという確証がないということである。当該取崩しが正当か否かという判断が争われる場合には、取崩しの意思確定が決算年度内にあったか否かは原則に戻ることになろう。
第3号の取崩しは、第30条第1項第2号に規定する金銭その他の資産を将来取得する固定資産の取得に充てる必要がなくなつた場合であるから、その計画変更決定時期の事後確認でも、その確認できる日が決算年度内でなければならない。したがって、決算年度内の理事会等決議が必要である。これは、第2号基本金の計画変更は例外なく確実な理事会決議を要すると考えるからである。
 
 
 
Q8 徴収不能引当金の会計方針の記載
重要な会計方針の徴収不能引当金には「徴収不能引当金は計上しておりません。」では記載は不十分である。




 
筆者注:
ここでの記載は会計方針の注記なのだから、あまり深く考えずに、文科省通知「17高私参第1号」に添付されている例示の通り「未収入金の徴収不能に備えるため、個別に見積もった徴収不能額を計上している。」とすればよい。計上額が「0」だから、この記載では?と疑問を抱くことはない。ここに注記した方針で見積もったものが結果として「0」であったと割り切りたい。
また、基準第37条によって徴収不能引当金に繰り入れないこととしている場合には、質問の記載でも容認されるが、「学校法人会計基準第37条により、徴収不能引当金は計上しておりません。」などのように根拠条文を付記することが望ましい。
 
 
 
Q9 有価証券勘定以外で保有している有価証券の時価情報の注記の要否
有価証券勘定において有価証券を保有していない場合であっても、引当特定資産などで時価のある有価証券を保有している場合には、時価情報の注記が必要である。
 
 
 
Q10 借入金に対する理事長の債務保証の注記の要否
日本私立学校振興・共済事業団からの借入金に対する理事長の個人保証のような借入先から借入の条件として必ず個人保証が求められている場合についても、被保証等の金額が学校法人の設定した重要性を超過しているのであれば、保証料の支払いの有無も含めて記載することが望ましい。
ただし、借入金に対する被保証も学校法人にとって不利にならず、また、自己又は第三者のために行う取引ではないため、注記しなくともよいという考え方もあるので、注記しないことも認められる。
 
 
 
Q11 出資先が学校法人の持分と理事者等の持分の合計が50%以上となる場合の注記
学校法人の出資比率は50%未満だが、理事者等の持分と合わせると50%以上と現在の通知等からすると必ずしも記載が必要とはいえないが、関連当事者の注記の趣旨からすると記載することが望ましいと考えられる。
記載する場合には、Q&A第17号Q27の記載例の「役員及びその近親者が議決権の過半数を有している会社」の次に「役員及びその近親者並びに学校法人が議決権の過半数を有している法人(関連当事者に準ずる法人)」との記載か。
 
 
 
Q12 関連当事者との取引に係る注記における重要性の判断基準
関連当事者との取引のうち、取引金額及び残高からみて重要性が乏しい取引については、注記を省略することができるが、この重要性の判断については学校法人の規模によって異なるため一律に決することはできない。学校法人が自らその判断基準を決定し、毎年度継続的に採用することが望ましい。
重要性の決定に当たっては、例えば、取引金額の重要性については帰属収入を基準にした金額を、残高の重要性については資産総額を基準にした重要性の金額を設定することや、固定資産明細表に係る注記の基準である「資産総額の1/100に相当する金額(当該金額が3,000万円を超える場合には3,000万円)」などを参考にすることも考えられる。
 
 
 
Q13 関連当事者との取引の重要性を判断する際の取引の単位
重要性の判断基準を取引の種類ごととするか年間の取引総額とするかについてはどちらの見解もあるが、各法人が重要性をどの程度にするのかと合わせてどちらの見解を選択するのかを明確に決めておき、継続的に適用することが必要である。
 
 
 
Q14 理事が代表取締役となっている会社との取引の注記の要否
関連当事者との取引として注記の対象となるか否かについては、代表権の有無のみでは判断されないので、それだけでは直ちに注記対象とはならない。相手先の意思決定機関の過半を占めているなど、関連当事者の注記の条件に該当すれば注記対象となる。
 
 
 
Q15 健康保険組合との取引の注記の要否
通常、取引条件が一律であることが想定されるため、特別な条件での取引(掛金の料率などが特別に優遇されているなど)がある場合や、掛金以外の取引がある場合でない限り、必ずしも注記は必要ないと考えられる。
 
 
 
Q16 地方公共団体や社会福祉法人との取引の注記
地方公共団体から土地を無償で賃借しているような場合、そのような取引があるというだけでは開示対象とはならない。
また、社会福祉法人である場合は、注記の条件に当てはまればそれぞれの取引の実態に応じて記載することになる。
 
 
 
Q17 年度末日が休日の場合の借入金に関する注記
借入金の返済処理を約定日に行う場合には、
注記事項の「その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」において、「会計年度末返済約定の借入金の会計処理」などの表題を付け、以下の注記を行うことが望ましい。
「本会計年度末に返済約定の借入金××円については、本会計年度末日が銀行休業日だが、返済約定日に返済が行われたものとして処理し、それに伴い第1号基本金の過年度未組入額についても同額を組み入れている。」
また、借入金の返済処理を実際の返済日に行う場合においても、同様の表題を付け、以下の注記を行うことが望ましい。
「本会計年度末に返済約定の借入金については、本会計年度末日が銀行休業日のため、返済約定日に返済していない。したがって、本会計年度末日返済約定の借入金××円が、本会計年度末短期借入金に含まれている。」