昭和55年2月4日    
日本公認会計士協会


学校法人の実務簿記(第3次改訂)
学校会計委員会報告……昭和55年2月4日
 
まとめ   















































































































































































































































 
以下は「学校法人の実務簿記」のはしがき及びその柱立てである。
@ はしがき
 昭和46年,文部省令第18号として,「学校法人会計基準」が制定されて以来,10年に近い歳月が過ぎ,学校法人の会計もようやく整備されてきたと思われる。
 「学校法人会計基準」が制定される以前においては,学校法人の多くは,資金収支計算書を中心とした計算体系をとっており,記帳方法も単式簿記で事足りたのである。しかし,「学校法人会計基準」では,学校法人に対し,複式簿記による正確な会計帳簿の作成を義務づけ,また,消費収支計算書という新しい計算書類を作成することとした。
 日本公認会計士協会では,「学校法人会計基準」の制定に伴う,新しい学校法人会計の確立を目指し,昭和45年6月に「学校法人の実務簿記」の初版を公表した。この初版を公表した当時は,文部省学校法人財務基準調査研究会による,学校会計に関する各種の研究が進められていた時期であり,学校会計に関する慣行もなかった。このような状況の中で日本公認会計士協会学校会計委員会の研究成果として公表されたのが,「学校法人の実務簿記」の初版である。その後,昭和46年6月,同47年7月と,それぞれ当時の学校会計委員会の手によって,2回の改訂が行われてきた。
 第二次改訂が行われて以来,「学校法人の実務簿記」は,手直しも行われずにいたのであるが,この間に私学のおかれた環境は大きく変った。それは何といっても,私学振興助成法の成立による,私学助成の増大であり,それに伴う被監査学校法人の増加であった。また,会計の面においても,学校法人独特の概念である基本金について,いわゆる49年2月報告が文部省通知として発表され,一応の考え方が定まった。
 現在,私学監査は幼稚園法人にまで及び,その数も年ごとに増加している。このような状況の中で,「学校法人の実務簿記」の改訂についての要望も強くなったので,学校法人委員会では,基本金に関する会計処理を中心に改訂作業を進め,ここに第三次の改訂版を発刊することとなったのである。
 第1部「複式簿記のあらまし」は,初心者が第2部以下を理解する前提としての心安最小限の説明であるので,必要に応じて一般の簿記書も参考として会得されたい。
 第3部「帳簿式会計」と第4部「伝票式会計」は,その基本的な考え方を同じくしており,第2部「設例と資料」第5部「計算書類の作り方」は,本文の解説に当たり,それぞれ共通した資料を用いている。また,第二次改訂版までは様式だけが記載されていた各種計算書の内訳計についても,今回の改訂により,実数を記入して本書利用を便ならしめた。
学校法人の実務簿記
       目   次
はしがき
第1部 複式簿記のあらまし
 1.簿記と計算書類
 2.取引の二面的把握
 3.総勘定元帳とその勘定記入法
 4.仕訳と元帳転記
 5.試算表の役割
 6.資金収支の記録と計算
第2部 設例と資料
 1.勘定科目表
 (1)総勘定元帳科目と資金収支元帳科目に区分している趣旨
 (2)勘定科目表
 2.設例の年間取引一覧表
 3.設例の4月分取引一覧表
 4.資金収支元帳における諸勘定の記帳と計算
 5.総勘定元帳における諸勘定の記帳と計算
第3部 「帳簿式会計」による記帳の仕方
 1.「帳簿式会計」の特徴
 2.「帳簿式会計」による帳簿組織及び記帳経路図
 3.入出金伝票の作り方と作成例
 4.各種の出納帳の記帳の仕方と作成例
 5.月計表の作り方と作成例
 6.一括仕訳伝票の作り方と作成例
 7.個別仕訳伝票の作り方と作成例
 8.総勘定元帳の記帳の仕方と作成例
 9.資金収支元帳の記帳の仕方と作成例
第4部 「伝票式会計」による記帳の仕方
 1.「伝票式会計」の特徴
 2.「伝票式会計」による帳簿組織及び記帳経路図
 3.各帳票の様式
 (1)入金伝票の様式
 (2)出金伝票の様式
 (3)振替伝票の様式
 (4)現預金日計表(現預金出納帳)の様式
 (5)現預金月計表の様式
 (6)総勘定元帳の様式
 (7)資金収支元帳の様式
 (8)総勘定元帳のファイルされた状態図
 (9)資金収支元帳のファイルされた状態図
 4.各帳票の作成例
 (1)入金伝票の作成例
 (2)出金伝票の作成例
 (3)振替伝票の作成例
 (4)総勘定元帳の作成例
 (5)資金収支元帳の作成例
 (6)現預金月計表の作成例
第5部 計算書類の作り方
 1.決算のあらまし
 (1)決算の意義
 (2)決算の手続
 2.試算表及び精算表の作成例示
 (1)試算表の例示
 (2)精算表の例示
 3.計算書類の作成例示
 (1)資金収支計算書の例示
 (2)資金収支内訳表の例示
 (3)人件費支出内訳計の例示
 (4)消費収支計算書の例示
 (5)消費収支内訳表の例示
 (6)貸借対照表の例示
 (7)貸借対照表付属明細表の例示
   @ 固定資産明細表
   A 借入金明細表
   H 基本金明細表
 (8)付 表
   @ 基本金増減表
   A 科目別チェックリスト
 






































































































































 
解 説
 「学校法人の実務簿記」の審議経過を中心として(45.6.25)

1.この「実務簿記」が期待するねらい

 わが国の学校法人界においては,長く,共通の会計基準が存在しないことで,その設定が強く要望されておりましたが,文部省が音頭をとることにより斯界の代表が参加した「学校法人財務基準調査研究会」が発足して,2年近い審議を経て,去る5月2日「学校法人会計基準」として発表されました。
 これにより,学校法人の会計制度は,画期的な転換を迎えようとしていますが,それと同時に,私立学校経常的経費の国庫補助施策に,この「学校法人会計基準」が密接に関係があることは,広く一般に知られているところであります。すなわち,学校法人が補助金の交付をうけるときは,この「会計基準」にしたがって計算書類を作成し,その計算書類には,公認会計士等の監査が強制されることになりました。
 他方,学校法人が,上記の「会計基準」を実際にあてはめて,所期の目的を果たし,かつ,その効果をあげるには,何んといっても,それを受け入れることのできる会計組織が,まず,良好に樹立されなければなりません。したがって,学校法人は,すべて,自校における「帳簿組織」や「記帳のしかた」について,ここで改めて,十分に検討を加え,会計制度の整備充実を図りつつ,新「会計基準」の導入を,いかにしたら支障なく,どうしたらスムーズに実行できるかを慎重に研究しなければならないときでありましょう。
 しかしながら学校法人における会計制度の現状は,共通した会計基準がなかったということ等が原因して,中には,かなり低いレベルのものが多いといわれています。このような実際面を直視するとき,会計職業人である公認会計士として,まず,帳簿組織や記帳方法についての問題をとりあげることにより,それらの面の改善向上に寄与したい所存となったものであります。
 私学法の規定にもとづく監査は,本年の秋ごろより実施の運びになるものと予測されますが,本年の初年度監査は「会計制度監査」を予定していると灰聞しています。現段階におけるその会計制度監査では,当然,被監査学校法人の会計制度の整備改善が目標とされるべきものと思われます。
 公認会計士が学校法人の監査責務を果たすには,当該学校だけでなく,広く一般学校法人の会計制度についても多角的研究を尽した後,実施しなければなりません。それらの研究資料の一端として,この「学校法人実務簿記」を役立たせたいと念願して企図したものであります。それとともに,学校法人側が,自ら会計制度の改善整備を図るための資料に本報告が役立つものと思っております。この種の研究資料が,現在,市販ものとしてほ,ほとんど存在しない現況にかんがみて,本報告は,学校法人の経理担当者が,そのまま閲読しても判りやすいことを目途に作業をすすめたものであります。また,公認会計士が本報告書をテキストにして,初歩の学校法人経理担当者に「学校法人の複式簿記」を指導できることもねらいに含めております。

2.帳簿組織の類型

 当委員会は,この「実務簿記」において,いかなる帳簿組織を採用するかについては,むしろ学校法人の現況を超越して,こうあるべき帳簿組織の類型から検討を加えることとしました。
 学校法人の帳簿組織は,@収支会計方式(仮称)A経営会計方式(仮称)の2つに分類されます。いずれの方式を採用するにしても求める計算書類は,つぎのとおりであることを前提としています。




 
(新会計基準による)
 資金収支計算書  
 消費収支計算書 
 貸借対照表    
 付属明細表    
(私立学校法による)
収支計算書     
           
貸借対照表     
財産目録      
(1)収支会計方式









 
 この方式は,収支計算書を作成することを主体とした帳簿であって,収入および支出の各勘定科目を総勘定元帳科目としています。
 貸借対照表,財産目録は,上記の収支総勘定元帳より一定時期に拾い出し方式,または,たな卸式によって,資 産,負債,基本金を求める方法をとります。
 この方法は,従来から多くの学校法人が採用している方法でありますが,多くの弱点を保有しています。
 この方式は,あくまでも基本的思想をこの類型にしたがい,これに,貸借対照表の作成を一定のルールづけにすることによって改善しようとするものであります。
(2)経営会計方式








 
 貸借対照表を拾い出し式,または,たな卸式に求める上記方式の欠陥を除去して,一定のルールに基づく「誘導法」によって求めることに着目したものであります(この方式によっている学校法人は,少数と判断されます)。
 現在,多くの事業会社が採用している企業会計の方法では,複式簿記の原理にしたがうことにより貸借対照表は,損益計算書と同時に,しかも誘導的に作成されます。このシステムを学校会計においても導入して目的とする財務諸表の作成を容易に,しかも,合理的に導こうとするものであります。
 当委員会では,収支会計方式か,経営会計方式か,議論は,沸騰しましたが,大勢は,後者の経営会計方式を採用することとしました。小規模の学校法人においては,収支会計方式で,こと足りるかもしれませんが,大規模の学校法人では,経営会計方式でなければ,到底運営がつかなくなるであろうとの意見でありました。
 また,文部省の「学校法人会計基準」,「学校法人計算書類作成要領」においても,本報告と同様に「経営会計方式」の帳簿組織を支持しているものとみられます。

3.記帳のしかた

 「経営会計方式」の帳簿組織による「記帳のしかた」については,この「実
務簿記」においては,さらに「帳簿式会計」と「伝票式会計」に分けて,共通の設例によって,実際的に記述していますが,ここが特徴をなしており,苦心を重ねたところであります。
(1)帳簿式会計
 <計算体系>
  総勘定元帳→消費収支計算書,貸借対照表
  資金収支元帳→資金収支計算書
 <帳簿組織>
  (主要簿)→(補助簿)
  仕訳伝票   資金収支元帳
  総勘定元帳  現金,預金出納帳固定資産台帳,その他
 この「帳簿式会計」は,一つのケーススタディーとなっており,主要簿系統の記帳手続を簡略化して補助簿系統との重複記入を極力避ける試みに行なっています。
 また,記帳の簡略化のために,資金取引は,月計表によって,取引を集計し,その集計額をもって一括仕訳を行なうこととし,期中における会計処理は,現金主義で行ない,非資金取引については,原則として期末において処理することにしています。
(2)伝票会計方式
 この「伝票会計方式」も,一つのケーススタディーとして掲げたものであり,会計伝票は,入金伝票,出金伝票,振替伝票の3本立で,部門別に,かつ,資金収支元帳科目ごとに起票することとしております。入金伝票および出金伝票は,4枚複写(控用,資金収支元帳用,総勘定元帳用<現預金>,総勘定元帳用<相手科目>であり,振替伝票は,5枚複写となっています。
 資金収支については,現金,当預,普預の3種とし,@総勘定元帳科目用現預金日(月)計表により,総勘定元帳科目ごとに取引を集計して,その集計額を総勘定元帳に記入し,A資金収支元帳科目用現預金月計表により資金収支元帳科目ごとに取引を集計し,その集計額を資金収支元帳に記入します。
 また,期中における会計処理は,入金,出金伝票により,期首,期末においては,振替伝票を用いて取引記録を修正する方法をとっています。

4.審議経過

 この「実務簿記」に関する審議は,「学校法人の帳簿組織と記帳経路」について,ケーススタディー方式で数種の類型を作成する目途で,当初は,審議を開始し,各委員より,それぞれ「案」を提出して審議を続けてきたものであります。提出「案」は,次第に若干の類型に統合されることになり,今回は,このうち,2つの類型をとりまとめたものであります。この「実務簿記」の審議は,実は,昭和43年度より開始したものでありますから,2年にわたるものでありますが,文部省「学校法人会計基準」の完成前に,発表することは,その内容に喰違いがある場合には,読者に無用の混乱を起こさせることをおそれて,あえて審議の完了を延ばしておったものであります。今回,「会計基準」が完成したことに伴い,内容においても,できるだけ同基準に合わせて作成したものであります。
 (学校会計委員会委員長 船浮忠正)
 
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参考