昭和63年5月17日                            日本公認会計士協会


学校法人の退職給与引当金に関する会計処理及び監査上の取扱いについて
学校法人委員会報告第31号……昭和63年5月17日
学校法人委員会実務指針により平成23年5月17日廃止
 
まえがき










 
 学校法人会計の上で、退職給与の負債認識の必要性を明らかにしたものである。
●ただし、この報告では、役員退職給与引当金の設定についてはふれていない。


 
編者注:
 そして、現状では、役員退職給与引当金の計上は、学校法人会計では認められないとされている。
編者注:
なお、この報告は、<昭和52年1月11日、学校会計委員会報告第9号>の改訂版である。
報告第9号は、退職給与引当金の基準導入時の特別の取扱いを定めていたものであり、
また、昭和62年8月31日「学校法人会計基準の一部改正」により、貸借対照表の注記として「退職給与引当金の額の算定方法」を記載することが義務づけられたことから、この報告第31号に改訂されたものである。
編者注:
この報告は、<平成23年5月17日、学校会計委員会実務指針第44号「「退職給与引当金の計上等に係る会計方針の統一について(通知)」」に関する実務指針>により廃止された。
 
会計処理および表示 



 
学校法人は、就業規則、給与規定、退職給与規定、労働協約等に基づき退職金の支給義務を条件付き及び期限付きで負担している。
 
 
編者注:
 









 
退職金の支給義務を条件付き及び期限付きで負担していることは、企業における退職金の考え方と本質的に異ならない。
したがって、退職給与引当金の設定に当たって、昭和43年11月11日大蔵省企業会計審議会…<企業会計上の個別問題に関する意見第2「退職給与引当金の設定について」>を指針とすることも妥当な処理と認める。




 
編者注:
指針として認めるというより、この意見第2によって、退職給与引当金の意義等を理解し、退職給与引当金を設定しなさいということである。
 だだし、私学の場合は、各種の退職金団体があるので、次のようにそれを加味して退職給与引当金を設定しなければならない。








 
各都道府県私立学校退職金団体又は私立大学退職金財団に加入している場合の会計処理






 
●各都道府県私立学校退職金団体に加入している場合は、次の委員会報告に留意する。
 学校会計委員会報告第19号「私学退職金団体に対する負担金等に関する会計処理及び監査上の取扱いについて」(昭和50年5月7日)
●私立大学退職金財団に加入している場合は、次の委員会報告に留意する。
 学校法人委員会報告第29号「私立大学退職金財団に対する負担金等に関する会計処理及び監査上の取扱いについて」(昭和58年3月29日)
                                                      
















 
基準第34条第4項に基づく注記の例を示す
























 
●私学退職金団体に加入していない場合の記載例
 期末要支給額○○円の○○%を計上している。
●委員会報告第19号に基づいて算定している場合の記載例@
 期末要支給額○○円から○○私学退職金団体よりの交付金相当額を控除した金額の○○%を計上している。
 注:私学退職金団体は、それぞれの団体の名前を記載することが望ましいが、単に「私学退職金団体」と記載しても差し支えない。
●委員会報告第19号に基づいて算定している場合の記載例A
 期末要支給額○○円は、○○私学退職金団体よりの交付金と同額であるため、退職給与引当金は計上していない。
 注:私学退職金団体は、それぞれの団体の名前を記載することが望ましいが、単に「私学退職金団体」と記載しても差し支えない。
●委員会報告第29号に基づいて算定している場合の記載例
 期末要支給額○○円の○○%を基にして、私立大学退職金財団に対する掛金の累積額と交付金の累積額との繰入れ調整額を加減した金額を計上している。
●委員会報告第19号及び委員会報告第29号とを合わせて記載する場合の記載例
 上記の第19号の記載例と第29号の記載例をそれぞれ記載し、第19号の記載例には高等学校の教職員に係わる旨、第29号の記載例には大学等の教職員に係わる旨を併せて記載する。
編者注:
 本報告の解説によると、記載例はあくまで事例であるので、この事例が不合理である場合は、他の注記方法が考えられるとしている。そして解説は、さらに要は私学関係者に明瞭な情報を開示することであるともいっているので、余り記載例を気にすることなく、注記をしてよいものと考える。
   「問答式学校法人会計」11−10参照。
 
監査上の取扱い 




 
本取扱いに基づいて会計処理及び表示を行う場合は妥当なものと認める。



 
 
参考 








































 
退職給与引当金に関する会計処理および監査上の取扱いについて







































 
 昭和52年1月11日 日本公認会計士協会学校会計委員会第9号
 学校法人は,労働協約,就業規則等に基づき教職員の提供した労働に対応する退職金の支給義務を条件付および期限付で負っており,当会計年度の負担に属すべき退職金の金額を,その支出の事実に基づくことなく,その支出の原因または効果の期間帰属に基づいて当会計年度の消費支出として認識するとともに,これを負債として認識し,期末現在におけるその累積額を貸借対照表に明示しなけれはならない。このことは,企業における退職金に対する考え方と本質的に異なるところがなく,したがって,学校法人が退職給与引当金を設定するに当って,その指針として「退職給与引当金の設定について……企業会計上の個別問題に関する意見第2(昭和43年11月11日大蔵省企業会計審議会報告)」を採用することに支障はない。
 ただし,学校法人会計の現状にかんがみ,当面監査上は下記の取扱いによるものとする。
         記
1.昭和46年度末貸借対照表において,退職給与引当金残高に必要設定額に対する不足額が認められる場合であっても,会計制度の整備に関する改善事項として指摘しないものとする。
2.昭和47年度以降において退職給与引当金残高が不足している場合および昭和47年度以降において新たに退職給与引当金を設ける場合において,昭和56年度末までに毎会計年度規則的な繰入によって必要な設定額に達すると認められるときは,残高の不足について除外事項としないものとする。
(付記)
(1)(基本金の修正)
 退職給与引当金残高の不足額を昭和46年度中に充足する場合は,直接的に基本金の額を修正することもできるが,昭和47年度以降においては,必らず消費収支計算を通じて行なうものであることに留意すること。
(2)(沖縄県を除く知事所轄学校法人に関する特例)
 沖絶県を除く知事所轄学校法人については,「昭和46年度」,「昭和47年度」及び「昭和56年度」とあるのは,それぞれ「昭和48年度」,「昭和49年度」及び「昭和58年度」と読みかえるものとする。
(3)(沖縄県所在学校法人に関する特例)
 @ 沖縄県所在学校法人で文部大臣所轄学校法人については,「昭和46年度」,「昭和47年度」及び「昭和56年度」とあるのは,それぞれ「昭和48年度」,「昭和49年度」及び.「昭和58年度」と読みかえるものとする。
A 沖縄県所在学校法人で知事所轄学校法人については、「昭和46年度」,「昭和47年度」、及び「昭和56年度」とあるのは,それぞれ「昭和50年度」,「昭和51年度」及び「昭和60年度」と読みかえるものとする。
 







































































































































 
退職給与引当金の設定について
  <企業会計上の個別問題に関する意見第二>





































































































































 
 (昭和43年11月11日 大蔵省企業会計審議会報告)
一 退職金の性格
 退職金の性格についての基本的な考え方としてほ、貸金後払説、功績報償説及び生活保障説がみられるところである。わが国における退職金は、労働協約等に基づいて従業員が提供した労働の対価として支払われるものであると一般に解釈されており、したがつてそれは基本的には賃金の後払の性格を持つているといえるが、同時に長期勤続者を相対的に優遇する支給倍率方式をとつていること等から、勤続に対する功績報償及び老後の生活保障という性格もあわせもつているといえる。
ニ 退職給与引当金設定の意義
1 退職金の性格を貸金後払説に求めるならば、将来における退職金の支出を必要ならしめる原因ほ、支出がなされる以前の期間において労働の費消に伴つて発生することになるから、この事実を期間損益計算に反映させるためには、退職給与引当金を設定する必要がある。また、退職金の性格を功続報償説又は生活保障説に求める場合においても、退職金は、企業側における生産性の維持昂揚、労働力の確保などのための費用又は社会一般から期待されている福利厚生のための費用であると考えられるので、この事実を期間損益計算に反映させるためには、毎期規則的に退職給与引当金を設定する必要がある。
2 要するに、退職金の性格について前記三説のいずれをとるとしても、企業は労働協約等に基づき従業員の提供した労働に対応する退職金の支給義務を条件付及び期限付で負つている。したがつて企業は、当期の負担に属すべき退職金の金額を、その支出の事実に基づくことなく、その支出の原因または効果の期間帰属に基づいて当期の費用として認識するとともに、これを負債として認識し、期末現在におけるその累積額を貸借対照表に明示しなければならない。
三 退職金費用の期間配分の基準
1 退職給与引当金の設定に当たつては、従業員が将来退職する場合に支給される退職金のうち当期の負担に属すべき金額を当期の費用として計上すべきであるが、退職金の基本的な性格にかんがみると、退職金費用の期間配分は、主として労働の貢献度に基づいて行なうことが妥当である。
2 具体的には、従業員が将釆退職する場合に支給される退職金を、当該従業員の在職期間中の各期において支給される給与額に応じて期間配分する方法がまず考えられる。しかし、各期に支給される給与額は、労働の貢献度を把握するための一つの有効な指標であるけれども、それは必ずしも労働の貢献度を正しく反映したものであるとはいいきれず、また、退職金の性格を前記のように賃金後払の性格のほかに、功績報償及び生活保障の性格をも有するものであることを考えると、各期に支給される給与額のほかに、たとえば勤続年数の増加に応じて累進する退職金の支給倍率をも期間配分の基準として加味する方法が考えられる。さらに、これらの方法に利子の観念をとり入れたものを合理的な方法であるといえる。
3 退職金費用の期間配分の具体的基準については、このように唯一の基準のみをもつて合理的であるとすることは困難であるので、減価償却の方法の場合と同様に合理的と認められる諸方法につき、その選択的適用を認めるべきであると考えられる。
 このような考え方から、退職金費用の期間配分に当たつては、次に述べるような方法によつて、従業員が将来退職した場合に支給される退職金が、当該従業員が在職する期間中における各期の費用として合理的かつ規則的に期間配分されるように努めるべきである。
四 退職給与引当金設定の具体的方法
1 将来支給額子測方式
  この方法は、将来の退職金を各期に支給される給与額を基準として期間配分する方法である。具体的には、従業員の全勤続期間における給与総支給額(将来の給与支給額は見積りによる。) をもつて当期に支給された給与額を除した割合を、従業員が将来退職する場合に支給されるべき見積退職金の総額に乗じて算出した金額をもつて毎期の退職金費用として計上する方法である。
  注 この方法によつた場合においては、従業貝が将来退職する場合に支給されるべき退職金及び昇給率を予測する必要があるため、高度の推定計算をとり入れなければならないので、実務においては保険数理専門家の援助が必要である。
2 期末要支給額計上方式(支給倍率加味方式)
  この方法は、期末現在において全従業員が退職するとした場合の退職金要支給額(以下単に「期末要支給額」という。)と前期末におけるその額との差額をもつて毎期の退職金費用として計上する方法である。実務においては、前記の将来支給額予測方式のように推定計算によつて退職金費用を期間配分する方法を採用することは一般に困難であるので、予測を用いないで現に把握できる数値をもつて期間配分計算を行なうこの方法によることが通常実際的であると考えられる。
  この方法は、本来従業員の全勤続期間における給与総支給額に対する各期の給与額の割合と退職金の支給倍率との二つの基準によつて将来の退職金を期間配分する方法である。全員が一時に退職することを仮定して、期末現在の従業員の給与月額に退職金支給倍率を乗じて期末要支給額を計算することは、単なる計算上の便宜である。
  注 期末要支給額についてほ、会社都合による退職と自己都合による退職との割合を合理的に推定して計算することが妥当である。この割合が実際と合致しない場合には、予測による計算上の誤差が若干生じる余地がある。
3 現価方式
  この方法は、前記の将来支給額予測方式又は期末要支給額計上方式に利子の観念をとり入れた方法である。具体的には、将来支給額予測方式又は期末要支給額計上方式によつて各期への費用配分額として計算された金額を退職金支給予定時期までの期間及び一定の割引率によつて現在価値額に割り引き、この現在価値額と期首退職給与引当金の利子相当分の金額とを合計した金額をもつて毎期の退職金費用として計上する方法である。
  この方法ほ、基本的には、減価償却計算における複利法のように退職金費用の計算に利子の観念を導入したものであるが、同時にこれは、退職金債務が通常極めて長期の将来の支出に対する債務であるから、これを現在価値で評価すべきであるという考え方にも合致することになる。
  注1 イ 米国会計学会「会社財務諸表会計及び報告諸基準(l657年改訂版)」
      U 基礎槻念(抄)
       金額的測定  購入または販売と最終的代金決済との間に相当長期間の時間的ずれを伴うような交換条件のもとでは、実質的な交換価格は、予想される決済金額を適切な利率でその現在価値に割り引いたものと規定しえよう。
     ロ 米国公認会計士協会「年金費用の会計」(会計原則審議会公式見解第八号)
       この公式見解は、年金基金が設定されている場合の年金制度について主に述べたものである。しかし、年金基金が設定されていない年金制度の場合にも、ここに述べた会計処理はあてはまる。後者の場合にほ、その年金費用は、年金基金が設けられている場合と同じょうに保険数理原価法(将来の要支給額の現価を求める方式)により算定されるべきである。しかしながら、この場合には、予定利子を稼得するための基金が設定されていないのであるから、当期の年金費用引当額は、もしも過年度の引当額が基金として放資されていたとするならば当期中に稼得したとみなされる利子相当分だけ増額されるべきである。(抄)
  注2 わが国企業における退職給与引当金の設定方法は、ほとんど法人税法の規定する方法によつているが、この方法は、その基本的な考え方においては、期末要支給額計上方式に現価方式を結合した方法と異ならない。
    ただし、法人税法における期末要支給額の算定方法ほ、従業員の全員が自己都合により退職するとした場合を前提とし、かつ、期末要支給額に割引率を適用して計算した現在価値額が、期末要支給額の二分の一に相当する金額となることを前提としている。
    本来、企業が現価方式によつて退職給与引当金を設定する場合には、企業の実態に応じた割引計算を行なうべきものであるので、法人税法の定めるところによつて画一的な計算に基づいて退職給与引当金を設定した場合には、企業によつては必ずしもその実態に適合していない場合が生じる。
     しかしながら、当該企業の従業員の在職年数の構成等が、現行税法基準の計算根拠と大差のない場合その他企業が退職給与引当金を独自に計算するだけの実益が認められない場合には、平均的に定められている現行法人税法の基準によることが便宜と考えられる。
     ただし、近い将来に大量の退職者が見込まれる場合等明らかに法人税法が定める退職給与引当金の限度頻によることが妥当でないと認められる場合には、企業の実態に応じた妥当な計算に基づいて退職給与引当金を改定すべきである。
  注3 退職給与引当金の改定については、いずれの方法を採用するかによつてその設定額にし相当の開きが認められるので、そのれ設定方法について財務諸表に注記をすることが妥当である。
五 過去勤務費用
  新たに退職金制度を設けた場合または退職給与規程の改訂を行なつた場合もしくはべ−スアップを行なつた場合には、当該退職給与引当額または退職給与引当金の修正額は、これを原則としてその期の費用として計上すべきである。
付 記
1 この「意見」に従つて退職給与引当金を設定するに当たつては、さらに、実施上の具体的な指針が必要であると考えられるが、これについてほ日本公認会計士協会が適切な措置をとることが望ましい。
2 現行法人税法が定めている退職給与引当金の繰入限度額の計算根拠は、昭和三十五年の税制調査会の答申において明らかにされているが、その後における企業の従業員構成の変化等を考慮して、法人税法としてはこの繰入限度額のあり方についての再検討を行なうとともに、今後、この「意見」が提唱するその他の諸方式が一般に採用されることを考慮してこれについても検討を進めることが望ましい。