昭和58年3月29日                            日本公認会計士協会

私立大学退職金財団に対する負担金等に関する会計処理及び監査上の取扱いについて
学校法人委員会報告第29号……昭和58年3月29日
報告第29号廃止……平成25年1月15日
学校法人委員会Q&A第2号……昭和59年3月21日
研究報告第22号-Q&A第2号改正……平成23年11月8日
平成25年7月3日改正
 
会計処理および表示 


























 
1.負担金について
 財団法人私立大学退職金財団に支払う負担金(加入金、登録料及び掛金をいう。)は、
消費支出として処理し、
人件費に属する小科目のうちに独立した細分科目を用いて表示する。
細分科目の例:「私立大学退職金財団負担金」等





















 
編者注:
 第19号とは異なり、本報告では、「会計処理」と「表示」がきちんと使い分けられて定められている。
●「消費支出として処理する」とは、
資金収支計算では「人件費支出」として、消費収支計算では「人件費」として処理せよということである。
●「人件費に属する小科目のうちに独立した細分科目を用いて表示する」とは、
「大科目:人件費(人件費支出)、小科目:教員人件費(支出)等」の、その「小科目:教員人件費(支出)等」の内訳科目、すなわち人件費支出内訳表における本俸、期末手当、その他の手当、所定福利費のレベルに科目を設定して表示しなさいということである。
 細分とはこのレベルでの科目細分である。第3号様式「人件費支出内訳表」では、本来は細分できない、すなわち科目設定ができないものをこの委員会報告で指示したものである。
編者注:
●第3号様式 人件費支出内訳表
   教員人件費支出
    本務教員      
      本俸    
      期末手当  
      その他の手当
      所定福利費 
            ← (何)がない。本来は細分できない。




























 
2.交付金について
 財団法人私立大学退職金財団から受ける交付金は、
雑収入で処理し、
●資金収支計算書では、
大科目:雑収入、小科目:「私立大学退職金財団交付金収入」等を用いて表示する。
●消費収支計算書では、
大科目:雑収入、小科目:「私立大学退職金財団交付金」等を用いて表示、
すなわち、雑収入「交付金」と人件費「退職金」とは相殺せず、両建表示されることになる。




















 
編者注:
 解説では、消費収支計算書での表示について、相殺表示する意見もあるが、本報告では、上記の述べたように両建て表示を求めたとし、
その理由として、退職給与引当金を計上している学校法人においては、教職員の退職時に退職金について消費支出の負担はない。(退職金の支払額は退職給与引当金で充当されるので消費支出としては「0」になる。)したがって、消費収入たる交付金と相殺すべき相手がない。敢えて相殺すべきものを探すと「掛金」ということになるが、これは適当ではない。
 このようなことから相殺は行わないこととしたとされている。

 だが、退職金の用意と支払を、消費収支計算の上で、単純にみてみると次のようになる。とすると、解説での説明で相殺をしない理由を説明できるのであろうか。
 説明はともかく、結論は両建て表示で妥当である。
●退職給与引当金を設定する場合。自家引当ての場合。
 @ 引当金組入額 ×× 引当金 ××
 A 退 職 金  ×× 現 金 ××
   引 当 金  ×× 退職金 ××
●退職給与引当金を設定しない。財団加入の場合。
 @ 掛 金 ×× 現 金 ××
 A 退職金 ×× 現 金 ××
   現 金 ×× 交付金 ×× 


























 
3.退職給与引当金について
 退職給与引当金は、従来通り計上する。
 なお、財団に対する掛金の累積額が交付金の累積額を上回る場合には、その上回る額(掛金累積額−交付金累積額)に相当する金額を、年度必要繰入額から控除して、退職給与引当金を設定する。
 ただし、この繰入額の調整計算は、金額の重要性がない場合は行わないことができる。
 



















 
編者注:
 毎年の繰入額計算をどのようにするかは、この報告本文のみでは理解しがたい。解説もともに読み、それを理解する必要がある。
●「年度必要繰入額から控除して」とは、この調整計算が年度計算であるということである。
 控除すべき繰入調整額が必要繰入額(退職給与引当金繰入額)を上回る場合には、算式を単純に理解すると引当金の取り崩しが求められることになるが、報告は年度計算での控除を想定しているので前年度までの引当金の取り崩しは行わない。
●「掛金の累積額が交付金の累積額を上回る場合には」調整計算をするとされているが、逆の場合については触れていない。
 しかしながら解説では逆の場合、掛金の累積額が交付金の累積額に到達しない場合には、引当金に追加して計上するとされている。
 報告で触れなかったのは、このようなケースはまれであるからとされている。
 しかし、この調整計算を行うと、以後、掛金の累積額が交付金の累積額を上回る場合が起きても、先に見たように年度計算で過去引当額の調整を行わないので、負債認識での過剰状態が長く続くことにならないだろうか。それとも、上回る金額と必要繰入額が近似して計算されると考えてもよいのだろうか。
●いずれにしても、難しい処理を求めたものである。
●処理の基本的考え方は、掛金は要は外に蓄えた退職金財源であり、交付金はその使用額であるから、単純に、その差額を退職給与引当金に加減するとしてもよかったのではないだろうか。
 
監査上の取扱い 






 
本取扱いに基づいて会計処理及び表示を行う場合は妥当なものと認める。





 
編者注:
 新しく財団が誕生したことによる会計処理及び表示であるので、本報告に従う限り、会計処理及び表示の変更にはならない旨を定めたものである。
と、会計士協会の解説にはあるが、この文言からはそうは読めない。若しくは読みにくい。
変更とは違うということを解説では言いたかったのであろう。
 
参考 



 
●本報告の公表後、翌年度昭和59年3月21日に日本公認会計士協会から学校法人会計問答集(第2号)が公表され、いくつかのQ&Aが明らかにされている。
「私立大学退職金財団に対する負担金等に関する会計処理及び監査上の取扱いについて」








 
●Q1
高校、短大を設置する学校法人が、高校部門では委員会報告19号、短大部門では委員会報告29号に従って退職給与関係の会計処理を行う。同様のことに異なる会計処理方法で矛盾しないか。




 

 退職金団体の財政方式には、事前積立方式と賦課方式がある。
19号対象の都道府県退職金団体は、事前積立方式を、29号対象の私学退職金財団は、修正賦課方式をとっている。
制度が異なる方式であるので矛盾はない。














 
●Q2
退職給与引当金の計上基準として期末要支給額の50%基準をとっている。毎年の繰入調整額の計算に当たっても50%を乗ずるのか。











 
A 
 賦課方式では、原則として掛金=交付金である。しかし、学校法人単位では年度のずれが認められると思われるので、その差額の調整計算を報告29号は求めたものである。
 したがって、退職給与引当金の計上計算とは関係のない処理である調整計算では、50%を乗じない。
編者注:
 退職給与引当金計算での50%は、引当額(負債額)の算定で50%が妥当ということで使われるものであり、計算後の引当額(負債額)はこの計算で確定する。
その確定額の調整計算の調整額は全く別個の考え方で算出される。よって、50%が理論の中にでてくる余地がない。





















 
●Q3
調整計算は、個々の教職員別に行うのか、大学、短大等の部門別に行うのか。
法人全体の調整額を部門に按分できないか。


















 
A 
 退職給与引当金繰入額の調整計算は、原則として部門別に行う。
●この場合、年度で計算した掛金の累積額を、人事の部門異動に伴って、その異動先の部門に振り替え修正しなくてよい。
●編者注:当然交付金は退職者が出た部門で受け入れ、そのまま累積計算されることになろう。
●教職員別は、交付金は既に退職したものに係るものであるので、掛金と交付金の対応関係を持てないので認められない。
●法人全体計算は、次のような難点があるので認められない。
@文部省通知「文管企第250号、資金収支内訳表等の部門別計上及び配分について、昭和55年11月4日」により、人件費については原則として按分計算が認められていない。
A退職給与引当金の計算要素が各部門を通じて通常同質でないと認められるので、按分する合理的要素が見出し難い。
B計算手続きからしても、按分計算より部門計算の方が簡便であると考えられる。
 ただし、部門間の人事異動が頻繁に行われる等特殊の事情がある学校法人の場合には、例外的に按分方法を認める。
編者注:
 思い切った割り切りで指示したよい取扱いである。






























 
●Q4
退職給与引当金繰入額の具体的調整計算は?




























 
A 
  例1.引当金の計上基準が期末要支給額基準の場合         











 
 
    項     目    初年度 第2年度 第3年度 第4年度











 
@当期末退職要支給額     10,000  10,400   9,600  10,300
A前期末引当金計上額      9,500   9,800  10,000   9,800
B当期引当金取崩額        500    600   1,500    700
C差引引当金期末残高(A−B)  9,000   9,200   8,500   9,100
D引当金要繰入額(@−C)    1,000   1,200   1,100   1,200
E当年度掛金額          600    700    750    800
F掛金累積額           600   1,300   2,050   2,850
G当年度交付金額         400    500   1,350    600
H交付金累積額          400    900   2,250   2,850
I引当金繰入調整額(F−H)    200    400  △200     0
J引当金繰入額(D−I)      800    800   1,300   1,200
K当期末引当金計上額(C+J)  9,800  10,000   9,800  10,300
                                
  例2.引当金の計上基準が期末要支給額にたいする50%基準の場合  











 
    項     目    初年度 第2年度 第3年度 第4年度










 
@当期末退職要支給額     10,000  10,400   9,600  10,300
A前期末引当金計上額      4,750   4,800   4,800   5,000
B当期引当金取崩額        500    600   1,500    700
C差引引当金期末残高(A−B)  4,250   4,200   3,300   4,300
D引当金要繰入額(@×1/2−C)   750   1,000   1,500    850
E当年度掛金額          600    700    750    800
F掛金累積額           600   1,300   2,050   2,850
G当年度交付金額         400    500   1,350    600
H交付金累積額          400    900   2,250   2,850
I引当金繰入調整額(F−H)    200    400  △200     0
J引当金繰入額(D−I)      550    600   1,700    850

















 
●Q5
年末退職者の交付金決定通知書の到着は5月頃になり、決算での未収計上には間に合わない。未収計上はどうするのか。
また、掛金も2ヶ月遅れになっており、この未払金計上は行うのか。













 
A 
 交付金の未収計上、掛金の未払計上は、合理的な見積もりでよいので、ともにしなければならない。
 未収金、未払金の計上額と実際額とに差異がある場合には、それぞれ翌年度の交付金または掛金に加減する。
編者注:
●交付金の未収計上について
 確かに決定通知書は5月になるだろうが、退職者にかかる交付金は業務方法書等で算出できるのであるから、この額を以て未収計上すべきだということである。交付金は教職員の退職という事実が生じた日に属する会計期間に認識すべきなのであるし、計上金額が計算できるのであるから、未収計上は当然であろう。
●掛金の未払計上について
 掛金の期間認識も給料支払時であるし、掛金額の計算ができるのであるから、この未払計上も当然である。
















 
●Q6
第19号報告(高校以下教職員)の負担金については「所定福利費」、第29号(大学教職員)については「私立大学退職金財団負担金」で表示するとなっているが、両者を併せて一つの科目で表示できないか。












 
A 
 両者併せての一つの科目ではなく、それぞれ別個に独立の科目で表示する。
編者注:
 Q&Aは上記の回答に加えて、「したがって、原則として私立大学退職金財団に支払う負担金は『所定福利費』とは別個の細分科目で表示されることになる。」としているが、
ここでは『所定福利費』に代えて『私学退職金団体』とすべきである。
第19号で、負担金を「所定福利費」または「私学退職金団体」を用いて表示するとしたのは、第29号を予定していなかった当時のことであり、第29号が公表されて、かつ、第29号で「私立大学退職金財団」での表示が求められた現在では、第19号と第29号の両者の適用がされる場合には、上記のようになるべきである。
 当然、第19号のみの適用の場合には、「所定福利費」の表示でも妥当である。







 
●Q7
 第29号公表時の一時的な取扱いのため……略……。





 
A 
 
編者注:
県の退職金社団から私立大学退職金財団に加入替えした場合の引当金設定額を5年間で分割計上できるかを問うたものである。
Aは当該年度で一括計上をしなければならないとしている。