消費税法の帳簿の記載要件と立替払いの精算  
公認会計士 山口善久  
消費税の仕入税額控除を受けるための要件である「帳簿又は請
 
求書等の保存」が「帳簿及び請求書等の保存」に改められ,平
成9年4月1日より,課税仕入れについては,帳簿の保存と請求書
 
等の保存がともに求められることになりました。
この改正については,その趣旨の是か非については別として,


















































































































 



















































 
実務的にそれをみると,請求書等の保存についてはその疑義が
余りないものとおもわれますが,帳簿の保存については,その
記載の仕方等について判然としないことがいろいろとでてきて
いるようです。
ために,国税庁では,「仕入税額控除の要件における帳簿の記
載内容について」としてQ&Aを明らかにしたことはご承知の
とおりです。しかしながら,このQ&Aによってもまだよく理
解できない点があるのが実状ではないかと思われます。
それは,議論の対象になる帳簿体系についてQ&Aの書き手と
読み手の間で,また,読み手と読み手の間で統一されたものが
ないからかと推測されます。簿記の教科書でみる,取引の発生
から仕訳帳(仕訳伝票の綴り込みを含む)の記帳,それの転記
による総勘定元帳の記帳といったモデル帳簿体系が,そして,
仕訳帳への記帳および総勘定元帳への転記が,その取引要件の
全てを記帳及び転記しているといったモデル記載方法が実際の
事務で行われているのはまれで,合理化等により帳簿体系や帳
簿記載についてはその簡略化が行われているのが通常であり,
さらにその簡略化の内容が様々であるという現状に起因してい
るのではないでしょうか。
このうち極端な簡略化をみますと,原始証憑から直に総勘定元
帳に記帳し,その記帳内容も総勘定元帳から財務諸表を作成す
ることができる程度の,すなわち,取引金額のみの記帳ですま
すものとなります。この方法ですと,消費税法でいう仕入税額
控除の要件としている帳簿の記載要件すなわち@課税仕入れの
相手方の氏名又は名称,A課税仕入れを行った年月日,B課税
仕入れに係る資産又は役務の内容,C課税仕入れに係る支払対
価の額,といった帳簿記載の四つの要件のうち@及びBの二つ
の要件が記載されていないこととなります。この判定に対して
帳簿の記帳者は,総勘定元帳でAの課税仕入れを行った日及び
Cの支払対価の額が記載されており,それによって仕入税額の
計算ができ,そして,その裏付けは請求書等があり,それには
@,A,B及びCが記載されているので,帳簿の記載要件は充足
されていると弁明するものと思われます。しかしながら,この
ケースに対してQ&Aは,問5(仕入税額控除の要件としての帳
簿代用書類の保存の可否)をおき,請求書等による帳簿代用は消
費税法でいう「帳簿及び請求書等の保存」があるとは認められ
ないとしています。
では,請求書等の原始証憑に基づき記帳された仕訳帳(又は仕訳
伝票)に消費税法でいう記載要件の@,A,B及びCを記載し,
それに基づき総勘定元帳にはA及びCを記帳している場合はど
うでしょうか。このケースでは,総勘定元帳で仕入税額が計算
でき,仕訳帳(又は仕訳伝票・・・・・・仕訳伝票は保存にあたっては
日付順に綴り込まれているので仕訳帳と認識できる)で@,A,
B及びCの四つの要件を備えており,その裏付けは請求書等で
なされるので,消費税法でいう「帳簿及び請求書等の保存」が
あるといえます。
では,立替払いがある場合の精算についてはどうでしょうか。
学校において教員が消耗品(文具等)の購入を数回それぞれ異な
った日に自費で行い,その後精算請求をしてきた場合を想定し
てみます。
数回の消耗品の購入を,異なった仕入日毎にそれぞれ別の仕訳
伝票に起票し,それに記載要件の@,A,B,Cを記入して(こ
の場合には四つの要件のほかにAとは異なった記帳日が仕訳伝
票に記入されていることになる),総勘定元帳にはCのみを転
記した場合は,総勘定元帳の転記日(仕訳伝票の記帳日)がAの
課税仕入れを行った日と異なっていても,先の事例と本質的に
同じであり消費税法でいう「帳簿及び請求書等の保存」がある
といえましょう。
また,同一の仕訳伝票にこれら数回の取引を別々に記載してい
る場合も,上記の異なった伝票に起票した場合と何ら異ならな
いものと理解され,記載要件は具備されていることになります。
では,学校が立替払いの精算書を用意して,教員がそれに@,
A,B,Cを全て記載し精算請求を行い,帳簿記帳者はそれを
精算請求日をもって一括して(数回の取引の合計金額をもって)
仕訳伝票に(借方)消耗品×××(貸方)現金×××とした場合は
どうでしょうか。これについては精算書に@,A,B,Cの要
件が記載されているのであるから,精算書を綴り合わせて保存
していれば,これが帳簿とみなされて帳簿の記載要件が具備さ
れているものとしての実務処理が可能とされています。
要は,請求書等相手方が作成した書類の綴り合わせでは帳簿と
認められないが,帳簿の書き手が作成した書類の綴り合わせは,
消費税法の帳簿と理解してよいということであろうし,ここで
の帳簿は総勘定元帳に限られていないということでしょう