私立大学特例によるみなし譲渡所得等の非課税取り扱いについて
                             山 口 善 久
 
まえがき
 平成15年度の税制改正において、租税特別措置法40条による譲渡所得等の非課税規定の改正等が行われました。この改正等は私立大学特例と呼ばれる定めが主であって、私立大学等では強い関心があるようです。そこで、その概要をとりまとめてみました。
 なお、国税庁は措置法40条関係については、この改正等に従来の通達等を含めて「『租税特別措置法第40条第1項後段の規定による譲渡所得等の非課税の取り扱いについて』の一部改正について」(法令解釈通達)(平成15年6月9日付け課資4-245)を発遣しております。
 
1 財産を公益法人等に寄附したときの課税関係
 個人が法人に対して、土地や建物などの譲渡所得の起因となる財産や山林を寄附した場合は、時価により譲渡があったとみなされて、譲渡所得や山林所得などが課税されます(所得税法59条)。
 
贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
所法第59条  次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。 一  贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。) 二  著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
 
 ただし、国や地方公共団体に対して、譲渡所得の基因となる財産や山林を寄附した場合には、その寄附に基づく譲渡所得や山林所得は、非課税とされています。また、公益法人に対して、譲渡所得の基因となる財産や山林を寄附した場合には、一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、その寄附に基づく譲渡所得や山林所得は、やはり非課税とされています(措法40条)。
 また、この申請は、その贈与等があった日から4月以内とされています(措令25の17@………4月以内は今回の改正です)。
 
(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)
措法第40条  国又は地方公共団体に対し財産の贈与又は遺贈があつた場合には、所得税法第五十九条第一項第一号 の規定の適用については、当該財産の贈与又は遺贈がなかつたものとみなす。民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三十四条 の規定により設立された法人その他の公益を目的とする事業を営む法人に対する財産の贈与又は遺贈(当該法人を設立するためにする財産の提供を含む。以下この条において同じ。)で当該贈与又は遺贈が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することその他の政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについても、また同様とする

 
措令第25条の17  法第四十条第一項 後段の規定の適用を受けようとする者は、贈与又は遺贈(同項 後段に規定する法人を設立するためにする財産の提供を含む。以下この条において同じ。)により財産を取得する法人の事業の目的、当該贈与又は遺贈に係る財産その他財務省令で定める事項を記載した申請書に当該申請書に記載された事項が事実に相違ないことを当該法人において確認した書面を添付して、当該贈与又は遺贈のあつた日から四月以内(当該期間の経過する日前に当該贈与があつた日の属する年分の所得税の確定申告書の提出期限が到来する場合には、当該提出期限までとする。)に、納税地の所轄税務署長を経由して、国税庁長官に提出しなければならない。この場合において、当該期間内に当該申請書の提出がなかつたこと又は当該書面の添付がなかつたことにつき国税庁長官においてやむを得ないと認める事情があり、かつ、当該贈与又は遺贈に係る山林所得又は譲渡所得につき国税通則法第二十四条 から第二十六条 までの規定による更正又は決定を受ける日の前日までに当該申請書又は書面の提出があつたときは、当該期間内に当該申請書の提出又は当該書面の添付があつたものとする。
 
 そして、寄付金控除にあたっては、譲渡金額のうち、その資産の取得費(その資産を贈与又は遺贈するために支出した金額がある場合には、その金額を含む。)に相当する部分の金額が特定寄付金になるとされています(所法78条、措法40条E)。
 
(寄付金控除)
所法第78条  居住者が、各年において、特定寄付金を支出した場合において、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額をこえるときは、そのこえる金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
一  その年中に支出した特定寄付金の額の合計額(当該合計額がその者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の二十五に相当する金額をこえる場合には、当該百分の二十五に相当する金額)
二  一万円
2  前項に規定する特定寄付金とは、次に掲げる寄付金(学校の入学に関してするものを除く。)をいう。
一  国又は地方公共団体(港湾法 (昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務局を含む。)に対する寄付金(その寄付をした者がその寄付によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄付をした者に及ぶと認められるものを除く。)二  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三十四条 (公益法人の設立)の規定により設立された法人その他公益を目的とする事業を行なう法人又は団体に対する寄付金(当該法人の設立のためにされる寄付金その他の当該法人の設立前においてされる寄付金で政令で定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定めるところにより財務大臣が指定したもの
イ 広く一般に募集されること。
ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。
三  別表第一第一号に掲げる法人その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄付金(前二号に規定する寄付金に該当するものを除く。)
3  ……… 略 ………
4  第一項の規定による控除は、寄付金控除という。
 
措法第40条
6  第一項の規定の適用を受ける財産の贈与又は遺贈について所得税法第七十八条第一項 の規定の適用がある場合における同条 の規定の適用については、同条第二項 中「寄附金(学校の入学に関してするものを除く。)」とあるのは、「寄附金(租税特別措置法第四十条第一項(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)の規定の適用を受けるもののうち同項に規定する財産の贈与又は遺贈に係る山林所得の金額若しくは譲渡所得の金額で第三十二条第三項に規定する山林所得の特別控除額若しくは第三十三条第三項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除しないで計算した金額又は雑所得の金額に相当する部分及び学校の入学に関してするものを除く。)」とする。
 
2 国税庁長官の承認を受けるための一定の要件 
 
 1の非課税の適用を受けるためには、次の(1)〜(3)に掲げる要件を全て満たさなくてはなりません(措令25条の17A)。
(1) その寄附が、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること。
(2)−@その寄附が、その寄附があった日以後2年以内に寄附を受けた公益法人の公益を目的とする事業の用に供され、又は供される見込みであること。
A寄附を受けた公益法人が、収用などやむを得ない理由として国税庁長官が認める理由により、その寄附財産を譲渡する場合は、その譲渡代金の全額を代替資産としての減価償却資産、土地又は土地の上に存する権利の取得に充て、かつ、その代替資産が寄附のあった日以後2年以内に寄附を受けた公益法人の公益を目的とする事業の用に供され、又は供される見込みであること。
(3) 公益法人に対して財産を寄附することにより、その寄付者の所得税を不当に減少させ、又はその寄付者の親族その他これらのものと特別の関係がある人の相続税若しくは贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないと認められること。
……(措置令25条の17第3項に定められている要件を満たす場合は、この  (3)の要件は満たしているものと取り扱われます(措令25の17B)。)
 
措令第25条の17
2 法第40条第1項に規定する政令で定める要件は、次に掲げる要件(当該贈与又は遺贈が法人税法別表第1に掲げる独立行政法人に対するものである場合には、第2号に掲げる要件)とする。
一 当該贈与又は遺贈が、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること。
二 当該贈与又は遺贈に係る財産(当該財産につき第7項各号に掲げる場合に該当する場合において、その譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもつて当該各号に定める資産を取得するときは、当該資産)が、当該贈与又は遺贈があつた日以後2年を経過する日までの期間(当該贈与又は遺贈を受けた土地の上に建設をする当該贈与又は遺贈に係る公益を目的とする事業の用に供する建物のその建設に要する期間が通常2年を超えることその他のやむを得ない事情があるため、当該期間内に当該財産の贈与又は遺贈を受けた法人の当該事業の用に供することが困難である場合には、当該贈与又は遺贈があつた日以後国税庁長官が認める日までの期間)内に、当該法人の当該事業の用に供され、又は供される見込みであること。
三 法第40条第1項後段に規定する法人に対して財産の贈与又は遺贈をすることにより、当該贈与者若しくは遺贈者の所得に係る所得税の負担を不当に減少させ、又は当該贈与者若しくは遺贈者の親族その他これらの者と 相続税法第64条 第1項に規定する特別の関係がある者の相続税若しくは贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないと認められること。
3 法第40条第1項後段に規定する法人で次の各号に掲げる要件を満たすものに対する財産の贈与又は遺贈は、前項第3号の規定の適用については、同号に規定する所得税又は贈与税若しくは相続税の負担を不当に減少させる結果とならないと認められるものとする。
一 その運営組織が適正であるとともに、その寄附行為、定款又は規則において、その理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるもの(以下この項及び次項において「役員等」という。)のうち親族関係を有する者及びこれらと次に掲げる特殊の関係がある者(次号及び次項において「親族等」という。)の数がそれぞれの役員等の数のうちに占める割合は、いずれも3分の1以下とする旨の定めがあること。
イ 当該親族関係を有する役員等とまだ婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
ロ 当該親族関係を有する役員等の使用人及び使用人以外の者で当該役員等から受ける金銭その他の財産によつて生計を維持しているもの
ハ イ又はロに掲げる者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの
ニ 当該親族関係を有する役員等及びイからハまでに掲げる者のほか、次に掲げる法人の 法人税法第2条 第15号に規定する役員((1)において「会社役員」という。)又は使用人である者
(1) 当該親族関係を有する役員等が会社役員となつている他の法人
(2) 当該親族関係を有する役員等及びイからハまでに掲げる者並びにこれらの者と法人税法第2条第10号に規定する政令で定める特殊の関係にある法人を判定の基礎にした場合に同号に規定する同族会社に該当する他の法人
二 その法人に財産の贈与若しくは遺贈をする者、その法人の役員等又はこれらの者の親族等に対し、施設の利用、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、役員等の選任その他財産の運用及び事業の運営に関して特別の利益を与えないこと。
三 その寄附行為、定款又は規則において、その法人が解散した場合にその残余財産が国若しくは地方公共団体又は他の公益を目的とする事業を営む法人に帰属する旨の定めがあること。
四 その法人につき公益に反する事実がないこと。
 
【非課税となる寄附財産】
 非課税となる寄附財産は、上記(2)に定められているように寄附を受け入れる公益法人の自らの公益事業の用に供されるものが原則です。
 しかし、収用などやむを得ない理由として国税庁長官が認める理由によりその財産を譲渡し、その譲渡代金で代替資産を取得し、その代替資産を公益法人の公益事業に供する場合は特別に寄附を受ける財産として認められています(措令25の17A二)。しかし、この要件はかなり厳格で次に説明する私立大学特例による贈与等を除いて、通常は受入寄附財産の譲渡は容易ではありません(措令25の17F、措規18の19G)。
 
措令第25条の17
7  法第四十条第二項 に規定する政令で定める理由により同条第一項 の規定の適用を受けた贈与又は遺贈に係る財産の譲渡をした場合は、次の各号に掲げる場合とし、同条第二項 に規定する当該財産に代わるべき資産として政令で定めるものは、当該各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める資産とする。
一  当該財産につき法第六十四条第一項 に規定する収用等又は法第六十五条第一項 に規定する換地処分等による譲渡があつた場合(法第六十四条第二項 若しくは第六十八条の七十第二項 又は第六十五条第七項 若しくは第八項 若しくは第六十八条の七十二第七項 若しくは第八項 の規定によりこれらの譲渡があつたものとみなされる場合を含む。) 当該財産に係る法第六十四条第一項 若しくは第六十八条の七十第一項 に規定する代替資産又は法第六十五条第一項 若しくは第六十八条の七十二第一項 に規定する交換取得資産
二  当該贈与又は遺贈に係る公益を目的とする事業の用に供する施設につき、所得税法第二条第一項第二十七号 に規定する災害があつた場合において、その復旧を図るために当該財産を譲渡したとき。 その災害を受けた施設(災害により滅失した場合には、当該施設に代わるべき当該施設と同種の施設)の用に供する減価償却資産、土地及び土地の上に存する権利
三  前号に規定する事業の用に供する施設(当該財産をその用に供しているものに限る。)における当該事業の遂行が、環境基本法 (平成五年法律第九十一号)第二条第三項 に規定する公害により、若しくは当該施設の所在場所の周辺において風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第二条第一項第一号 から第七号 までに掲げる営業が営まれることとなつたことにより著しく困難となつた場合又は当該施設の規模を拡張する場合において、当該施設の移転をするため当該財産を譲渡したとき。 当該移転後の施設の用に供する減価償却資産、土地及び土地の上に存する権利
四  当該財産のうち第四項の規定の適用を受けた贈与又は遺贈に係るもので同項第二号に規定する方法により管理されていたものを譲渡したとき。 当該譲渡をした財産に代わるべき資産として財務省令で定めるもので引き続き当該方法により管理されるもの
五  前各号に掲げる場合に準ずる場合として財務省令で定める場合 その譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもつて取得した資産で財務省令で定めるもの
 
措規第18条の19
8  施行令第25条の17第7項 第4号に規定する財産に代わるべき資産として財務省令で定めるものは、当該贈与又は遺贈に係る財産の譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもつて取得する資産で、当該資産につき第5項に規定する方法により同項の基本金に組み入れることが同条第4項の法人の理事会その他これに準ずる機関において決定されたもの(その決定をした旨及びその決定をした事項が当該決定に係る議事録その他これに相当する書類に記載されているものに限る。)とする

 
3 私立大学特例
 
 ただし、1の寄附が、私立学校振興助成法第4条第1項に規定する大学又は高等専門学校を設置する学校法人で学校法人会計基準に従い会計処理を行う学校法人へのものである場合には、2の承認の際の要件は、2に掲げられた要件ではなく次の要件とされ、この要件を満たした寄附については、譲渡所得等は非課税とされます(措令25の17C)。
(1)その寄附した者が当該法人の役員等及びその親族等に該当しないこと。
(2)その寄附された財産(当該財産につき譲渡があつた場合には、譲渡金額の全額をもつて取得した資産)は、学校法人会計基準第30条第1項に規定する基本金に組み入れる方法により管理されていること。
(3) 寄附を受けた法人の理事会等において、寄附の申出を受け入れること及びこの財産につき基本金に組み入れることが決定されていること。
 
第25条の17
4 その贈与又は遺贈が、 法第40条 第1項後段に規定する法人(法律の規定により自主的にその財政基盤の強化を図るべきこととされているものに限る。)で財務省令で定めるものに対するものである場合において、次に掲げる要件を満たすものであることを証する書類として財務省令で定める書類を添付した第1項の規定による申請書(当該法人が当該贈与又は遺贈に係る財産を第2号に規定する方法により管理することとする旨の記載のあるものに限る。)の提出があつたときは、同条第1項に規定する要件は、次に掲げる要件とする。
一 当該贈与又は遺贈をした者が当該法人の役員等及びその親族等に該当しないこと。
二 当該贈与又は遺贈がされた財産(当該財産につき譲渡があつた場合には、当該譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもつて取得した資産(財務省令で定めるものに限る。)を含む。)が当該法人の財政基盤の強化を図るために財務省令で定める方法により管理されていること。
三 その財務省令で定める要件
 
措規第18条の19
6  施行令第25条の17 第4項第3号に規定する財務省令で定める要件は、同項の法人の理事会その他これに準ずる機関において、当該法人が当該贈与又は遺贈の申出を受け入れること及び同項第2号に規定する財産につき前項に規定する方法により同項の基本金に組み入れることが決定されていることとする。
 
【寄附財産の受入法人】
 説明が後先になりますが、上記の措置令25条の17第4項では、この定めが適用される法人は、法律の規定により自主的にその財政基盤の強化を図るべきこととされているものに限り、財務省令で定めるものであるとしています
 そして、財務省令(措置法規則第18条の19第2項)は、それを私立学校振興助成法第4条第1項に規定する大学又は高等専門学校を設置する学校法人で学校法人会計基準に従い会計処理を行うものとしています。
 さらに通達40-18は、これについて次のような解釈規定を置きました。実質的に、これらにより私立大学特例が適用される法人か否かの判定が行われることになります。
 (1) 監査報告書
 監査報告書において、当該法人の会計処理は学校法人会計基準により行う旨の記載があるものは、これに該当するものとして取り扱われます。
 (2) 寄附行為
 寄附行為等において当該法人の会計処理は学校法人会計基準により行う旨の記載があるものは、これに該当するものとして取り扱われます。
 
措規第18条の19
2  施行令第25条の17 第4項に規定する財務省令で定める法人は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)第4条第1項に規定する大学又は高等専門学校を設置する学校法人で同法第14条第1項に規定する文部科学大臣の定める基準に従い会計処理を行うものとする。
 
(法律の規定により自主的にその財政基盤の強化を図るべきこととされているもの)
措法通達40-18
 措令第25条の17第4項に規定する法律の規定により自主的にその財政基盤の強化を図るべきこととされている法人で財務省令で定めるものとは、租税特別措置法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号。以下「措規」という。)第18条の 19第2項の規定による私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)第4条第1 項に規定する大学又は高等専門学校を設置する学校法人で同法第14条第1項に規定する文部科学大臣の定める基準である学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に従い会計処理を行うものをいい、例えば、その贈与又は遺贈に係る法人の監査報告書又は寄附行為等に当該法人の会計処理は学校法人会計基準により行う旨の記載があるものは、これに該当するものとして取り扱う。
 
【創設理由】
 この定めが創設された理由は、「私立大学等は、我が国の学校教育において極めて重要な位置を占めており、その教育研究機能を向上させることが我が国の将来の基盤をなすものであるといわれている一方、経営基盤や資金力が脆弱であるため、研究基盤が十分確立されておらず、その果たすべき機能を十分に発揮されていないといった指摘が従来からされていました。また、国立大学等と相並んで私立大学等における研究能力の高度化・活性化を図ることが科学技術創造立国を目指すためにも重要なものと位置付けられています。      
 このように、私立大学等の経営基盤の強化と研究能力の高度化・活性化を図るという諸課題に対し、税制面において支援するため、現物寄附の促進が図られるよう、私立大学又は高等専門学校を設置する学校法人に対する現物寄附に係る国税庁長官の承認等の特例が……編集部略……定められました。」(改正税法のすべて、大蔵財務協会)とされています。
 したがって、私立大学等は、十分この趣旨を生かし、この特例を利用することが望まれます。
 
【自動承認】
 上記私立大学特例の冒頭(1)〜(3)の要件を満たすことを証する書類を添付した申請書の提出があった場合において、この申請書の提出後1月以内に承認又は不承認の決定がなかったときは、この申請は承認されたものとみなされます(令25条の17D)。
 これは、創設理由に述べられているように私立大学等の経営基盤の強化と研究能力の高度化・活性化を図ることの重要性からと思われます。    
 
措令第25条の17 
5 前項の贈与又は遺贈につき同項の申請書(同項の書類の添付があるものに限る。)の提出があつた場合において、第1項の税務署長に当該申請書の提出があつた日から1月以内に、当該申請の承認がなかつたとき、または当該承認をしないことの決定がなかつたときは、当該申請の承認があつたものとみなす。
 
【申請手続き】
(1)添付書類
 この特例を受けようとする者は、その学校法人から交付を受けた次の書類を添付して、その贈与があった日から4月以内に申請しなければなりません(措令25の17C、措規18の19B)。
@贈与又は遺贈をしたものが受入学校法人の役員等及びその親族等に該当しないことを確認した旨の証明書
A受入学校法人の理事会等が寄附を受け入れること及び受入財産を基本金に組み入れることを決定した旨の記載がある議事録等の写し
B受入財産の種類、所在地等を記載した書類
 
措規第18条の19
3  施行令第25条の17 第4項に規定する財務省令で定める書類は、同項の法人から交付を受けた次に掲げる書類とする。
一  施行令第25条の17 第4項の法人に対し同項の申請書を提出した者が当該贈与又は遺贈をした者について同項第1号に規定する役員等及びその親族等に該当しないことを誓約する旨及び当該法人において当該該当しないことを確認した旨を記載した書類
ニ  施行令第25条の17 第4項の法人の理事会その他これに準ずる機関の第6項の決定(次項の決定があつた場合には、同項に規定する財産を譲渡することについての当該決定を含む。)をした旨及びその決定をした事項の記載のある議事録その他これに相当する書類の写し及び当該決定に係る財産の種類、所在地、数量、価額その他の事項を記載した書類
 
(2)基本金明細表等の提出
 この申請書を提出し承認された者は、寄附があった日に属する事業年度の受入学校法人の基本金明細表等を、この事業年度の終了後3月以内に提出しなければなりません(措令25の17E、措規18の19F)。
 なお、措置令25条の17第1項で認められている申請書又は添付書面の提出期限の宥恕規定は,この基本金明細書の提出期限3月以内の定めには認められていません(通達40-20)。
 
措令第25条の17
6 第4項の申請書(同項の書類の添付があるものに限る。)を提出した者で当該申請の承認があつたものは、同項の法人の当該贈与又は遺贈をした日の属する事業年度において同項第2号に規定する財産が同号に規定する方法により管理されたことが確認できる書類として財務省令で定めるものを当該事業年度終了の日以後3月以内(当該期間の経過する日後に当該申請書に係る第1項の規定による提出期限が到来する場合には、当該提出期限までとする。)に、第1項の税務署長を経由して、国税庁長官に提出しなければならない。
 
措規第18条の19
7  施行令第25条の17 第6項に規定する財務省令で定める書類は、同項の法人の当該贈与又は遺贈をした日の属する事業年度において同条第4項第2号に規定する財産につき第5項の基本金への組み入れがあつたことを確認できる学校法人会計基準第36条に規定する基本金明細表その他これに類する書類の写しとする。
 
(基本金明細表等の提出期限)
措法通達40-20  措令第25条の17第1項に規定する申請書が同項に定める期間内に提出されなかったことにつき国税庁長官においてやむを得ないと認める事情があり、かつ、当該贈与又は遺贈に係る山林所得又は譲渡所得につき国税通則法第24条から第26条までの規定による更正又は決定を受ける日の前日までに当該申請書の提出があったことから、当該申請書が当該期間内に提出されたものとされる場合であっても、措令第25条の17第6項かっこ書の適用上、当該期間が延長されることにはならないことに留意する。
 
【寄附を受ける財産】
 私立大学特例における寄附を受ける財産は、通常の公益法人における寄附とは異なり、受入寄附財産が寄附を受け入れる公益法人が自らの公益事業の用に供するものに限定されてはいません。これは、先程来説明してきましたように私立大学等の経営基盤の強化と研究能力の高度化・活性化を図ることの重要性からと思われます。 
 措置令25条の17第4項第2号は、それを「当該贈与又は遺贈がされた財産(当該財産につき譲渡があった場合には、当該譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもって取得した資産(財務省令で定めるものに限る。)を含む。)」としています。
 受入財産の譲渡をし、その代金をもって取得した財産が私立大学等の事業の用に供されれば、みなし譲渡とせず、非課税にするというのが今回の改正(創設)の最大目玉でしょう。
 ただし、措置令は、代替資産を財務省令で定めるものに限り(令25の17C2号)、この財務省令(措置法規則)は、その限定を譲渡収入全額をもって取得された財産で、この取得された財産の取得財源である当初の受入財産は譲渡され、かつ、この当初の受入財産が基本金に組み入れられることが理事会等で決定されていることを求めています(措規18の19C)。
 
措規第18条の19 
4  施行令第25条の17 第4項第2号に規定する財務省令で定める資産は、同項の法人が当該贈与又は遺贈を受けた財産を譲渡し、かつ、その譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもつて取得した資産で、当該財産を譲渡すること及び当該資産につき次項に規定する方法により同項の基本金に組み入れることが当該法人の理事会その他これに準ずる機関において決定されたものとする。
5  施行令第25条の17 第4項第2号に規定する財務省令で定める方法は、同号に規定する財産につき、学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)第30条第1項第1号から第3号までに掲げる金額に相当する金額を同項に規定する基本金に組み入れる方法とする。
 
 そしてこのことは、この措置令25条の17第4項2号のかっこ書きによる特例適用を受ける場合には、当初に受け入れた資産そのものがその譲渡の前に基本金に受け入れられていなければならない取り扱いとなりますので注意が必要です(措法通達40-19)。
 
(基本金に組み入れた財産の譲渡)
措法通達40-19  措令第25条の17第4項第2号かっこ書に規定する「当該財産につき譲渡があつた場合」とは、措規第18条の19第4項に規定する法人の理事会その他これに準ずる機関が贈与又は遺贈を受けた財産を基本金に組み入れる旨の決定を行った後に当該法人が当該財産を譲渡した場合をいい、この場合に限り当該財産の譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもって取得した資産が当該法人の財政基盤の強化を図るために同項に規定する方法により管理されていることとなることに留意する。
 
【承認の取り消し】
 非課税の承認を受けた後、寄附財産が公益事業に供されなくなった場合等には、国税庁長官はこの承認を取り消すことができるとされています(措法40A、措令25の17G)。
 そしてさらに、私立大学特例の適用を受けた場合は、寄附があった事業年度の終了後3月以内に基本金明細表等の提出がないときには、やはり承認の取り消し事由に該当します(措令25の17G、措規18の19I)。
 
措令第25条の17
8  法第四十条第二項 に規定する政令で定める事実は、第二項第二号に規定する期間内に同号に規定する財産が同号の事業の用に供されなかつたこと、同項第三号に掲げる要件に該当しないこととなつたこと、第六項に規定する財務省令で定める書類の提出がなかつたことその他財務省令で定める事実とする。
 
措規第18条の19
10 施行令第二十五条の十七第八項に規定する財務省令で定める事実は、同条第四項の申請書の提出の時において同項第一号に掲げる要件に該当していなかつたこと及び当該提出の時において同号に掲げる要件に該当しないこととなることが明らかであると認められ、かつ、当該提出の後に同号に掲げる要件に該当しないこととなつたこととする。
 
措令第25条の17
9  法第四十条第一項 の規定の適用を受けた贈与又は遺贈に係る財産について、同項 に規定する承認が取り消された場合には、当該贈与又は遺贈があつた時に、その時における価額に相当する金額により、当該財産の譲渡があつたものとして、同条第二項 後段に規定する贈与又は遺贈に係る山林所得の金額又は譲渡所得の金額を計算し、当該贈与者の当該承認が取り消された日の属する年分(その日までに当該贈与者が死亡していた場合には、死亡の日の属する年分)又は遺贈者の死亡の日の属する年分の所得として、所得税を課するものとする。
 
【適用関係】
 これらの改正は、平成15年4月1日以後にされる財産の贈与等に適用され、これ以前にされた贈与等については従前どおりとされています(改正措令付則16)。