リース取引に関する会計処理について
 
                      平成20年9月25日
                        公認会計士 山 口 善 久
 
まえがき
 文部科学省は,平成20年9月11日付けで「リース取引に関する会計処理について・20高私参第2号」(以下,「文科省通知」という。)を通知し,平成21年4月1日以降にリースが開始するリース取引についてこの通知による会計処理を求めた。
 リース取引については,日本公認会計士協会から,「リース取引に関する会計処理及び監査上の取扱い・学校法人委員会報告第37号」(以下,「CPA報告第37号」という。)が平成9年12月8日に公表されており,従来はこのCPA報告第37号により会計処理が行われていたが,文科省通知は,CPA報告第37号による会計処理を平成21年3月31日までに開始するリース取引とした。
 新しい文科省通知の内容は,CPA報告第37号で賃貸借取引に係る方法に準じて処理することが認められていた所有権移転外ファイナンス・リース取引について通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を求めたものである。
 ただし,リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下の所有権移転外ファイナンス・リース取引等については,従来通り通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理が認められているので,高額物件のリースを予定していない法人については従来と変更がないといってもよい。
 以下,文科省通知によりリース取引についての会計処理を概観したい。
<文科省通知・20高私参第2号・H20.9.11>
4 適用
  この通知による取扱いは,リース取引開始日が平成21年4月1日以降のリース取引について適 用する。
  なお,リース取引開始日が,平成21年3月31日以前のリース取引については,従来どおり,通常の 賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うことができるものとする。
 
1.会計処理の概略
 リース取引には,オペレーティング・リース取引とファイナンス・リース取引とがあり,オペレーティング・リース取引については,通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行い,ファイナンス・リース取引については,通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行う。
 ただし,ファイナンス・リース取引のうち所有権移転外ファイナンス・リース取引等については,通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理が認められる場合があり,これについては「5.ファイナンス・リース取引処理の特例」で後述する。
 
2.リース取引
@ リース取引とは 
  …オペレーティング・リース取引とファイナンス・リース取引…
 リース取引とは,簡略にいうと,借手が貸手から,特定の期間,特定の物件を借りて,その使用料を支払う契約取引をいい,文科省通知は,これを「特定の物件の所有者たる貸手が,当該物件の借手に対し,合意された期間(以下「リース期間」という。)にわたり,これを使用収益する権利を与え,借手は,合意された使用料(以下「リース料」という。)を貸手に支払う取引」と定義している。ここで,物件とは,通常の会計処理で資産として計上される有形物に特定されていないことに留意したい。
 そして,このリース取引は,オペレーティング・リース取引とファイナンス・リース取引とに区分される。
A オペレーティング・リース取引とは
 オペレーティング・リース取引とは,リース取引のうち,ファイナンス・リース取引以外のものをいうとされるが,これも簡略にいうと,物件の純粋
な賃貸借と考えられる取引である。
<文科省通知・20高私参第2号・H20.9.11>
2 用語の定義
(6) 「オペレーティング・リース取引」とは,リース取引のうち,ファイナンス・リース取引以外のものを いう。
B ファイナンス・リース取引とは
 …所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引…
 ファイナンス・リース取引とは,下記「2用語の定義(3)」のように文科省通知は定義するが,いうなれば,物件を借りているような契約をしているが,契約をリース期間の中途で解約できないうえに,その使用料をリース期間満了まで支払う義務を負っているのであるから,この契約は物件を購入しているのと同じで,リース期間中途の未払額は,資金を借りているのと同じである。よって,この取引は,ファイナンスであるというのである。
 そして,契約上,リース期間終了後又はリース期間の中途で,リース物件の所有権が借手に移転されること等が明らかにされているリース契約を,特に「所有権移転ファイナンス・リース取引」といい,それ以外のファイナンス・リースを「所有権移転外ファイナンス・リース取引」と
いう。
<文科省通知・20高私参第2号・H20.9.11>
2 用語の定義
(3) 「ファイナンス・リース取引」とは,リース契約に基づくリース期間の中途において契約を解除で きないリース取引又はこれに準ずるリース取引で,借手がリース物件からもたらされる経済的利益 を実質的に享受することができ,かつ,当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負 担することとなるリース取引をいう。…以下,筆者略…
(4) 「所有権移転ファイナンス・リース取引」とは,ファイナンス・リース取引のうち,次のいずれかに 該当するものをいう。
@ リース契約上,リース期間終了後又はリース期間の中途で,リース物件の所有権が借手に移転 することとされているもの
A リース契約上,借手に対して,リース期間終了 後又はリース期間の中途での割安購入選択権 (名目的価額又はその行使時点のリース物件の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利を いう。)が与えられており, その行使が確実に予想されるもの
B リース物件が借手の用途等に合わせな特別な仕様によるものであって,当該リース物件の返還 後,貸手が第三者に再リースし,又は売却することが困難であるため,その使用可能期間を通じて 借手によってのみ使用されることが明らかなもの
(5) 「所有権移転外ファイナンス・リース取引」とは,ファイナンス・リース取引のうち,所有権移転フ ァイナンス・リース取引以外のものをいう。
 
3.オペレーティング・リース取引の会計処理
 オペレーティング・リース取引は取引そのものが賃貸借であり,ファイナンスの要素がないのであるから,通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行う。
 
4.ファイナンス・リース取引の会計処理
(1) 消費収支仕訳
 イ <利子抜き法> 
 @リース取引開始時
 (借)リース資産 100  
             (貸)リース債務(※) 100
 Aリース料支払時(毎年22・うち2は利息)
 (借)リース債務    20
    支払利息      2
             (貸)現金預金    22
 B減価償却額の計上時
 (借)減価償却額   ×× 
             (貸)減価償却累計額 ××
  ※ リース債務は,未払金又は長期未払金   である。…以下の仕訳において同じ。
 ロ <利子込み法(資産処理)>
 @リース取引開始時
 (借)リース資産  110
             (貸)リース債務  110
 Aリース料支払時
 (借)リース債務    22
             (貸)現金預金   22
 B減価償却額の計上時
 (借)減価償却額    ××
             (貸)減価償却累計額 ××
 ハ <利子込み法(経費処理)>
 @リース取引開始時
 (借)経   費  ×××
             (貸)リース債務  ×××
 Aリース料支払時
 (借)リース債務  ×××
        (貸)現金預金  ×××
(2) 資金収支仕訳
 資金収支仕訳については,期末未払金としての計上又は学校法人において期中における未払金計上の慣行が薄いこと等からその仕訳には若干の工夫が必要である。詳細については,拙書「学校法人会計実務総覧:未払金・期末未払金」の項を参照されたい。
(3) ファイナンス・リース取引処理の原則
 ファイナンス・リース取引については,通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行う。売買取引に準じて会計処理をするのであるから,借方は資産又は経費の認識・計上であ
り,その仕訳は,上記(1)である。
<文科省通知・20高私参第2号・H20.9.11>
3 会計処理及び表示
(1) ファイナンス・リース取引の会計処理
@ 会計処理
  リース取引開始日に,通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理により,リース物件及びこれ に係る債務を,それぞれ該当する固定資産等の科目及び負債の未払金(長期未払金)に計上す る。
 この資産又は経費額を計上するにあたって,その算定には二つの考え方があり,一つは利子抜き法であり、二つは利子込み法である。
 資産計上の原則は利子抜き法であり,経費計上の原則は利子込み法である。
 なお,資産計上にあたり,原則法でない利子込み法が認められる場合があり,これについては(4)で後述する。
 利子抜き法とは,リース料総額から利息と考えられる額とリース物件の維持管理費用と考えられる金額を控除した残額を資産として計上する方法であり,利子込み法とは,リース料総額を資産又は経費に計上する方法である。
 利息相当額及び維持管理費用相当額は,リース取引契約書及びリース取引見積書等で
算出することになろう。
<文科省通知・20高私参第2号・H20.9.11>
3 会計処理及び表示
A 固定資産価額等
ア リース対象資産
 リース料総額を,リース債務の元本返済額部分,利息相当額部分及び維持管理費用相当額部分に区分し,元本返済額部分を固定資産価額として計上する利子抜き法を原則とする …以下,筆者略:下記(4)に掲載…
イ リース対象資産以外のリース物件
 リース対象資産以外のリース物件については,利子込み法によりリース料総額をもって経費として処理することを原則とする。
2 用語の定義
(9) 「利子抜き法」とは,リース料総額を,リース債務の元本返済額部分,利息相当額部分及び維持管理費用相当額部分に区分し,元本返済額部分をもって固定資産価額等とすることをいう。
(10) 「利子込み法」とは,リース料総額をもって固定資産価額等とすることをいう。
(4) 資産計上にあたり利子込み法が認められ  る場合
 ファイナンス・リース取引の会計処理において,借方:資産計上の原則は,上記(3)で述べたように利子抜き法を原則とするが,リース対象資産の総額に重要性が乏しいと認められる場合には利子込み法を適用することが認められる。煩雑な作業を省くことができるのでこの利子込み法の適用が簡易である。
 リース対象資産の総額に重要性が乏しいと認められる場合とは,細かい定義は文科省通知本文に委ねるが,簡略に述べると,利子込み法により処理しようとするリース取引の期末未経過リース料が,当該未経過リース料に有形固定資産とその他の固定資産を加算した金額
に占める割合が10%未満である場合である。
<文科省通知・20高私参第2号・H20.9.11>
3 会計処理及び表示
A 固定資産価額等
ア リース対象資産
  リース料総額を,リース債務の元本返済額部分,利息相当額部分及び維持管理費用相当額部 分に区分し,元本返済額部分を固定資産価額として計上する利子抜き法を原則とするが,リース対 象資産の総額に重要性が乏しいと認められる場合には,リース料総額をもって固定資産価額とす る利子込み法により処理することもできるものとする。
  この場合において,リース対象資産の総額に重要性が乏しいと認められる場合とは,貸借対照 表日後のリース期間に係るリース料(以下「未経過リース料」という。)の期末残高(通常の賃貸借取 引に係る方法に準じて会計処理を行うリース取引及び利子抜き法により固定資産に計上する会 計処理を行うリース取引に係るものを除く。)が,当該未経過リース料の期末残高,有形固定資産及 びその他の固定資産(有価証券,収益事業元入金,長期貸付金,引当特定預金等を除く。)の期末 残高(利子込み法により処理した場合におけるファイナンス・リース取引に係るリース対象資産に 係るものを除く。)の合計額に占める割合が10%未満である場合とする。
(5) リース料支払時の利息相当額認識
        …利息法と定額法…
 資産計上額を利子抜き法で処理する場合,上記(1)の仕訳でみるようにリース料の支払時にその支払額に含まれている利息相当額を支払総額から区分して経費で処理しなければならない。未払に計上していたリース料には利息相当額を含めていなかったのであるから当然の処理である。
 この場合,その処理方法には二つあり,一つは利息法と呼ばれる方法であり,今ひとつは定額法と呼ばれる方法であるが,文科省通知では,利息法が原則とされている。
 利息法は,未払債務の残高に応じて一定の率での利息を認識するので,未払債務の減少に応じて認識利息額が減少していく。これに対して,定額法は,リース期間において定額で利息を認識するのでリース期間における総利息相当額を単にリース期間で除すことにより算定される。
 なお,リース料支払時に定額法により利息相当額を計上できるのは,リース対象資産計上時にリース対象資産の総額に重要性がないと認められる場合でも利子込み法によらず利
子抜き法で処理した場合に限られているので,実務的にはさほどの簡略性はない。
<文科省通知・20高私参第2号・H20.9.11>
3 会計処理及び表示
C 利子抜き法の処理
  利子抜き法により処理する場合,利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法は, 原則として,利息法(各期の支払利息相当額をリース債務の未返済元本残高に一定の利率を乗じ て算定する方法)によるものとする。なお,リース対象資産の総額に重要性が乏しいと認められる場 合においても利子込み法によらず利子抜き法により処理するときには,定額法(利息相当額の総 額をリース期間中の各期にわたり,定額で配分する方法)によることもできるものとする。
 
5.ファイナンス・リース取引処理の特例
 ファイナンス・リース取引については,従来より通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行うのが原則であるが,現在,ファイナンス・リース取引のうち所有権移転外ファイナンス・リース取引については,@リース資産の種類A通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を採用している旨Bリース料総額C未経過リース料期末残高を注記することを条件に,通常の賃貸借取引に係る方法に準じた方法で会計処理できるとされている。しかし,今回の文科省通知により,この取扱いは,リース取引開始日が平成21年3月31日以前のものまでに限られ,リース取引開始日が平成21年4月1日以降のリース取引については,単に注記記載のみではこの適用が認められず,この適用条件がより厳しくなっている。
 文科省通知によると,ファイナンス・リース取引について通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理が認められるのは,リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下の所有権移転外ファイナンス・リース取引等についてであり,条件は厳しくなったが,高額リ−スを予定しない学校法人には影響は少ないものといえる。少額リース以外の条件については,次
の文科省通知を参照されたい。
<文科省通知・20高私参第2号・H20.9.11>
3 会計処理及び表示
(1) ファイナンス・リース取引の会計処理
@ 会計処理
  リース取引開始日に,通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理により,リース物件及びこれ に係る債務を,それぞれ該当する固定資産等の科目及び負債の未払金(長期未払金)に計上す る。
  ただし,次のいずれかに該当する場合には,通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を 行うことができる。
 ア リース料総額が学校法人の採用する固定資産計上基準額未満のもの(リース物件が少額重要  資産の場合を除く。)
 イ リース期間が1年以内のもの
 ウ リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のもの(ただし,所有権移転外ファイナンス・  リース取引に限る。)
 
6.リース対象資産の減価償却
 固定資産に計上されたリース料は,固定資産として認識されたのであるから,当然減価償却を実施しなければならない。
 減価償却額は,自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により算定するが,所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る資産計上額はリース期間を耐用年数とし残存価額をゼロとして算定しなければならない。
 所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る資産計上額についても,自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により算定する方法を同様に適用できれば,年度別一括償却を実行できる等減価償却実務が簡便になるものと思われる。是非,実務指針等で
この処理を可能として貰いたい。
<文科省通知・20高私参第2号・H20.9.11>
3 会計処理及び表示
(1) ファイナンス・リース取引の会計処理
C
リース対象資産の減価償却
  リース対象資産の減価償却は,自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法 により算定し,所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るものについてはリース期間を耐用年数 とし残存価額をゼロとして算定する。
  なお,会計年度の中途で取得した所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース対象資産 の減価償却額の計算においても,当該リース対象資産について計算される年間減価償却額を月 数按分したものによるほか,次の簡便法を採用している場合も,重要性がない場合には,妥当な会 計処理として取り扱うことができるものとする。
 ア 取得時の会計年度は,償却額年額の2分の1の額により行う。
 イ 取得時の会計年度は,償却を行わず,翌会計年度から行う。
 ウ 取得時の会計年度から償却額年額により行う。
 
7.再リース料の会計処理
 再リースを行う場合の再リース料は,経費として処理する。
 
8.注記
 所有権移転外ファイナンス・リース取引でリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のものであることにより,通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行った場合で,これらのリース料総額の合計額に重要性があるときは,「リース物件(又はリース資産)の種類」,「リース料総額」及び「未経過リース料期末残高」等を注記しなければならない。
 この注記は,現在認められている所有権移転外ファイナンス・リース取引で通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行った場合の条件注記と注記の性格は異なるが,表示注記には異なるところがない。
 平成21年4月1日以降は,委員会報告第37号の注記とこの文科省通知の注記が混在することが予想されるので,文科省通知は別添で次の注記事項記載例を示している。
 
 ☆別添注記事項記載例
<文科省通知・20高私参第2号・H20.9.11>
3 会計処理及び表示
(3) 表示
B 注記
 ア 上記3(1)@ウに該当し,又はリース取引開始日が下記4に記したこの通知による取扱いの適 用前であるため,所有権移転外ファイナンス・リース取引について,通常の賃貸借取引に係る方法 に準じた会計処理を行った場合で,これらのリース料総額の合計額に重要性があるときは,「リース 物件(又はリース資産)の種類」,「リース料総額」及び「未経過リース料期末残高」等を注記する。
 イ 所有権移転外ファイナンス・リース取引の注記の記載様式については,この通知の別添注記 事項記載例を参考にされたい。なお,「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成につ いて」(平成17年5月13日付け17高私参第1号文部科学省高等教育局私学部参事官通知)の別添 2注記事項記載例<例1>1(2)「所有権移転外ファイナンス・リース取引の処理方法」及び7(6)「所有 権移転外ファイナンス・リース取引」は削除する。