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図版等が完全のものは<表計算ソフト・経営判断>をクリックで表示します。 学校法人の永続性をさぐる−どのような指標が経営を映し出すか−
H21.7.29 公認会計士 山口善久
まえがき
本誌・平成19年8月号に、「学校法人の永続性をさぐる−財務数値からのアプローチ−」を掲載し、それに「表計算ソフトによる経営困難性判断と将来予測」(以下、<表計算・経営判断>という。)を添付した。私自身は学校法人永続性の判断としてこの<表計算・経営判断>を利用しているが、他の人の利用はどうかなどということは全く考えていなかった。ところが、ある講習会でこの<表計算・経営判断>で使用している経営評価指標について質問された。利用してくれている人もいるのだなと思うと同時に、評価指標として何故この指標を取り上げたのかを今少し詳しく説明する必要性も感じたのである。質問に対する回答は、拙著「学校法人の財務分析」(学校経理研究会発行・以下、「財務分析」という。)に詳述しているが、本稿ではそれを簡略に纏めてみたい。
1 経営維持能力の考え方
私は、学校の永続性を「財務分析」で経営維持能力と名付け、その内容について次のように記述している。
経営を将来に向かって永続的に維持していく力を経営維持能力と呼ぶ。この経営維持能力を如何様なもので判定するかには様々な考え方があろうが、ここではそれを次の四点においてみる。
@ 経営(教育)に必要なものが揃っているか。
A 経営(教育)に必要なものが自己資金で調達されているか。
B 経営(教育)に必要なものが再取得できるか。
C 経常的活動が支障なくできるか。
@ 経営(教育)に必要なものが揃っているか。
実際在高
でこの力は判定されるが、本来的には金額の問題ではなく質と量の問題であ
必要在高
る。学校経営にとって必要なものは何か。そして、それはどの程度のもの(質)で、どのくらい(量)必要なのか。
学校にとって、これは大変難しい問題である。企業の場合は、必要なものと必要な量は、獲得利益との関係で定まるが、学校の場合にはこの考え方は採用できない。土地を広く、建物を広く、そして、校具備品を多量に揃えても、多いからといって決して「悪」とはされないのが学校である。企業の場合には、利益との関係でこの多さに対して良否の判断がされ、適量が定まってくる。学校の場合にも、確かに適量があるのであろうが、それをどの位と定めるのが難しいのである。そうした関係から、この決定は後に検討する資金関係に委ねざるを得ないのではないだろうか。ただ、学校は法的な存在で法の規制を受けているのでその定めをここに取り入れるのも一つの考え方である。しかしながら、それは決してその学校にとって最適な必要量を定めたものでないことを充分承知しておくべきである。
A 経営(教育)に必要なものが自己資金で調達されているか。
必要なものが自己資金でどの程度調達されているか。全てが自己資金であれば経営維持能力は大変良好であり、全てが他人資金であれば経営維持能力は大変不良である。調達資金に他人資金が含まれている場合は、見方を代えてみればこの力(経営維持能力)は他人資金を返済する力ともいえる。
B 経営(教育)に必要なものが再調達できるか。
建物も校具備品もいずれは使用不能となり、廃却される。経営(教育)に必要であったものなのだから再調達が求められる。この用意がどの程度されているのか。再調達資金の全額が用意されていれば経営維持能力は大変良好であり、そうでなければ経営維持能力に問題ありとされる。
再調達資金としては、?留保資金、?借入資金、?その時点での自己資金の新たな調達が考えられる。再調達が全て新たな自己資金で賄えるならばそれにこしたことはないが、現実には仲々難しいところであり、要はこれら三つの資金を如何様に絡ませるかにある。長期資金計画が求められる所以である。
C 経常的活動が支障なく出来るか。
施設設備だけが揃えられても、日常の活動に支障があっては何もならない。日常の支払にどの程度の資金が用意されているか。留保量が多ければ経営維持能力は良好、さもなければ経営維持能力に問題ありとされる。
2 経営維持能力と財務分析
財務分析は、このような経営維持能力の度合いを見るために実行される。そして、それは安全性、支払能力、採算性を分析することによって総合評価されなければならない。
良好に経営が維持されていくためには、組織の財務がバランスよく経営維持のために充分な状態になっていることが求められる。組織がバランスよい財務構造を保持しているか否かを判定の数値として見る方策が安全性の分析と呼ばれるものである。バランス良い財務構造を保持しているが故に、この分析は長期的な経営維持能力(又は長期の支払能力)を保証するのである。
このように安全性の分析で長期の経営維持能力(又は長期の支払能力)の度合いを見ることができるが、経営の維持にとっては当面の資金繰りも重要である。長期的には支払能力があっても短期的には支払能力が弱いことはよくみられるところである。
また、財務構造の改善は、採算性に影響される。企業における財務分析は、採算性の分析を第一義にし安全性を収益性を支えるものとするが、これは企業の経営目的を利益の獲得さらには利益の極大化に置くからである。しかしながら、学校の経営目的は利益獲得にあるのではなく永続的な教育の提供にあるところから、学校法人における分析の第一義は安全性の分析とし、採算性をそれを支えるものとするのである。
採算がとれる、すなわち[帰属収入−消費支出]又は[消費収入−消費支出]が均衡状態にあれば当初の財務状態に変化はなく、経営維持能力は当初のまま保たれるのであり、[帰属収入−消費支出]又は[消費収入−消費支出]がプラス(+)であれば財務状態は当初より改良され、経営維持能力は改善されるのである。また、[帰属収入−消費支出]又は[消費収入−消費支出]がマイナス(−)であれば財務状態は改悪され、経営維持能力は劣化されるのである。
3 10の評価指標
私は、以上のように学校経営の永続性を思考し、先に述べた<表計算・経営判断>ではその優劣判断指標を次のような10の比率に限定した。
4 安全性の評価指標
安全性分析は、貸借対照表分析として実施される。
貸借対照表分析における比率は、構成比率と関係比率に分類される。
構成比率は、資産合計(=負債及び基本金等合計=総資産)に占める各資産の割合や負債及び基本金等合計(=資産合計=総資金)に占める各負債及び基本金等の割合であり、関係比率は、資産と負債との割合等貸借対照表項目相互間の関連を比率で示したものである。一般的に財務分析で取り上げられる比率には次のようなものがある。
<構成比率>
固定資産構成率=
有形固定資産構成率=
その他の固定資産構成率=
留保資金構成率 =
流動資産構成率 =
負債構成率 =
固定負債構成率 =
流動負債構成率 =
自己資金構成率 =
長期資金構成率 =
<関係比率>
固定比率=
固定長期適合比率=
流動比率 =
安全性分析というと以上のように多くの指標があげられるにもかかわらず、私が<表計算・経営判断>で経営判断として取り上げた指標は、次の5つである。何故この5つに指標をとりまとめたのか。詳細は「財務分析」の第5章に譲るが、それは安全性分析が次に述べられているような考え方で構成されているからである。
要するに安全性分析は、
固定資産A ≦ 自己資金C
(A>Cであれば)
固定資産A ≦ 自己資金C+固定負債D
流動資産B ≧ 流動負債E
であることを期待し、各大科目が上記の関係にあれば財務的安全性は確保されていると判断するのである。さらに、これに構成比率を関係させ、図1の貸借対照表が図2のような貸借対照表にならないように注意しているのである。
図1 百分率貸借対照表
図2 百分率貸借対照表 構成比率 関係比率
したがって例えば、
固定比率 100%(以下)
流動比率 100%以上
(自己資金構成比率 50%以上)
固定資産構成比率 70% の貸借対照表は図3のようになる。
図3 百分率貸借対照表
どのような貸借対照表が経営にとって適正なものかは定かではないが、経営にとって必要な固定資産(ここでの保有資産には将来必要とされる固定資産や再調達されるべき固定資産も含まれるべきであるからそれらの取得財源であるその他の固定資産も含まれる)が保有され、それが自己財源での保有であれば、経営にとって安全性は良と判断されるのである。よって、必要な固定資産が保有されているという想定の基では経営指標のうちで最重要なものは「固定比率」である。そして、短期の支払資金の手当てをみるために「流動比率」が、さらに補充指標として「固定長期適合率」「その他の固定資産構成率」「自己資金構成率」が付け加えてられているに過ぎない。また、このうち「固定長期適合率」は固定比率が100%を割った場合にのみ意味を持つものであり、固定比率が100%を確保している場合には無視してもよい比率である。また、「その他の固定資産構成率」は、必要固定資産の再調達資金や新たな事業のための必要資産の留保状態を念のために見るというものであって、この高低のみでその良否を計ることは出来ないことに留意したい。
要は、1の経営維持能力の考え方であげた@経営(教育)に必要なものが揃っているか、A経営(教育)に必要なものが自己資金で調達されているか、B経営(教育)に必要なものが再調達できるかに集約されるのであるから、これらを脳裏におけば学校法人にとって如何なる貸借対照表が望まれ、その評価指標として何れが必要とされるかは推量できるであろう。百分率貸借対照表の大凡の形を重視したいものである。<表計算・経営判断>では、「危機判断」シートに<百分率貸借対照表>を描画しているので是非参考にして戴きたい。
5 採算性の評価指標
安全性を裏から支えるものが採算性である。採算に合う経営により安全性は高まり、反対に採算が悪い経営は安全性を損なうのである。企業の場合は、この採算性を収益性といい、利益の獲得を経営の一義的目的としているため、収益性の分析が安全性の分析に先立つのであるが、学校法人の場合には、教育の継続的提供が経営の一義的目的であるので採算性は安全性をサポートする形になるのである。
企業の財務分析では投下資本に対する利益の効率化を見るために、投下資本に対する利益の割合を分析する。これを資本利益率という。
投下した資本が大きければ、利益はそれに見合い大きくなることが求められ、その投下額での効率経営を目指すのである。利益の大きさだけで収益性を見ることは出来ないのである。
資本に対する利益率は、次のような資本の回転と経営の大きさ(売上高)に左右される。
資本利益率↑= 資本回転率↑ × 売上高利益率↑
投下された資本がどれだけ利用されているかを見るのが資本回転率であり、この回転率が高くなればなるほど資本の利用率が高まっているのであり、資本利益率は増大する。また、売上高利益率が高ければ高いほど資本利益率が増大するのは、上記の式から明瞭に読みとることが出来る。企業における財務分析は、これらの分析を主眼として実施されるのであるが、学校にこれを導入することが妥当か否かは次の理由により難しいところである。
一つは、資本の概念である。学校法人の財産には何人もその帰属権を主張することが出来ないことは私立学校法で定められている。したがって、学校経営には「資本」の概念はなく、したがって、仮に自己資金を資本とみなして分析を行っても無意味である。ただ、投下された財産がどの程度有効に利用されているかという意味においてはそれなりに意味を持たせられることは確かである。この意味で<表計算・経営判断>では、「総資金回転率」を経営指標としてあげたが、学校法人の永続性判断という視点からは必須の指標ではない。よって、この観点からの分析では無視して貰いたい。
二つは、売上高をどのようにみるかである。企業は利益の極大化を目指すので、資本回転率を高め、すなわち売上高を大きくして、かつ、その差益を大きくすることに力を注ぐのであるが、学校は売上高の増大といっても売上高の構成要素である人数(売上高=授業料単価×人数)が定員で頭打ちとされているため、その増大化にも限りがあり、かつ、売上高に対する観念に相違がある。
しかしながら、学校といえども決して収支差額(利益)を無視していいものではない。したがって、学校における財務分析にあっては、収支差額(利益)獲得の分析を資本との対比でみることを諦めて異なった視点から行うこととなる。
学校にとっての利益(収支差額)は、教育の継続的提供のための裏付けである。したがって、利益の絶対額確保が必要なのであって、その率が問題なのではない。率はあくまでも確保される絶対額が必要額に達しない場合の原因分析のためである。
繰り返すことになるが、売上高利益率は利益額に対する売上高の割合を百分率で表したものであり、企業の場合には、この比率は利益の極大化の理念から大変重要な指標である。
しかしながら、学校法人の場合には収益が様々のもので構成され、さらに、この構成割合が大変ばらついているため、企業の売上高のように活動と収益に直接的に連動していくものを選ぶことが出来ないので、売上高に代わり帰属収入をこれに当てざるを得ないのである。また、分子の利益を何にするかも難しく、単純に消費収支計算書から消費収支差額を持ってくることもできない。これは基本金の意義とも大きく絡み、現在のところ実務面では判然とすることが出来ないので、分子には余り問題がない[帰属収入−消費支出]を使用し、これを収支差額と呼ぶこととする。
[算式1]
帰属収入対収支差額比率=
[算式2]
帰属収入対収支差額比率=
[算式3]
帰属収入対収支差額比率=
= 1− 消費支出構成率
算式2の展開からも判るように、帰属収入対収支差額比率は、帰属収入を構成している様々の収入により影響を受けており、この状況を見るのが帰属収入に対する各構成率の分析となる。また、算式3にみるように分析に当たってよく聞かれる消費支出構成率はこの帰属収入対収支差額比率の裏の数値である。
帰属収入に対する各構成率を次に検討してみる。
科 目 帰属収入に対する割合
納付金 50 % 納付金比率
手数料 3
寄付金 3 寄付金比率
補助金 12 補助金比率
資産運用収入 6
資産売却差額 2
事業収入 22
雑収入 2
帰属収入 100
人件費 50 人件費比率
教育研究経費 24 教育研究経費比率
経費比率
管理経費 5 管理経費比率
借入金等利息 2 借入金等利息比率
資産処分差額 −
徴収不能引当金繰入額 −
消費支出 81 消費支出比率(=消費支出構成率)
収支差額 19 収支差額比率 (=帰属収入対収支差額比率=帰属収支差額比率)
納付金比率、寄付金比率、補助金比率等の収入構成率が、高い方がよいのか低い方がよいのかは単純には言い切れない。それは、帰属収入が分母になっていることもあるが、要はそれぞれがそれぞれの合計額(帰属収入)の構成率になっているからであり、それぞれの性格と意義付けをどうするかに係っているからである。
納付金の割合が高いことは自助努力の安定財源で収入が構成されていると考えれば、これは望ましいことであるが、他の財源が安定財源として毎年々々確保されているのであれば、この比率は学生生徒等の負担率であるので低い方が望ましいのである。
寄付金の割合が高いことは、学校法人の望ましい財源たる寄付金が多額に流入されていることであるから大変望ましいことであるが、寄付金の流入に波があるとしたら、当該学校法人の財源には安定性がないので若干の問題があるところである。
補助金の割合が高いことは寄付金同様の理由から望ましいことであるが、その財源に安定性がないと考えたならば問題といえる。
要は、毎年々々どの財源がどれほど確保されているかであり、それに加えて寄付金や補助金がどれほど上積みされているかが大事なのであって、単なる構成率でその良否は判定できないのである。
贅沢をいえば、安定財源でない収入は、支出との紐付き財源でない限り、全額収支差額として残存することが望まれるのである。
人件費比率、教育研究経費比率、管理経費比率、借入金等利息比率等及び消費支出比率は、帰属収支差額比率を高めるためには低いことが望まれる。この判断は経営効率化のためには当然の見方である。
しかしながら、これらの判断をそれで問題なしとするには若干の検討事項がある。その典型が教育研究経費比率である。教育研究経費比率は高い方がよいとされることがある。これは経営効率化の上からは理解しにくい見方であるが、これは又これで意味があるのである。見方が大変異なっているが、それは教育研究経費が多ければ教育研究がよいということである。果たして掛けているお金が多ければそれだけ教育内容がよくなるかは疑問ではあるがこのような考え方があるのは確かである。この論でいくと教育を押し進めていく原動力である人間に掛ける費用、人件費も多ければ教育がよくなるという考え方もとれそうであるが、人件費比率は一般に低い方がよいとされている。
要は、内容の善し悪しは投下した資金の多寡では判断できず中味を中味として分析しなければならないということである。ということから、財務分析においては支出に係る比率はいずれも低い方がよいとするのが穏当である。各比率が持つ他の内容については、別の検討事項とすべきであり、例えば、教育研究経費が使用される内容の量と質についての個別検討である。ここでは、教育研究経費は取りあえず十分使われているという前提でなければ、財務分析における観察は余りに複雑化して観察不能になるからである。
各種構成比率を検討してきたが、では、採算性の評価にあたってこれらをどのように結論付けたらよいのか。この比率は高い方がよい、この比率も高い方がよい、いや、この比率は低い方がよい、いや、この比率もやはり低い方がよい。各比率がまちまちに結論を出し、総合判断はどうするのか。
ということで、私は、<表計算・経営判断>で採算性指標としての比率を「帰属収支差額比率」「人件費比率」「人件費依存率」の3つに限定した。他の指標は、採算性を判断した後に採算性を向上させる際に或いは採算性を見直す際に利用すべきものとしたのである。といった視点からすると「人件費比率」「人件費依存率」も同列であり、総合判断からは除外すべきである。採算性の総合判断として指標をみる場合には除外して貰いたい。分析にあたり人件費の重要性から参考値として取り上げたのに過ぎないからである。
採算性分析を行い収支差額比率を見ると必ず出てくる話は、収支差額比率は何パーセントあればよいのかということである。「財務分析」に例示のパーセントは19%であるがこれでよいかということである。10%が望ましいとか20%が望ましいとか言われるが、それには根拠が薄い。結論をいえば、この比率は各々の学校法人によって異なるのであって、一律に何パーセントがよいとはいえないのである。
何故ならば、その比率は安全性の状態によって異なるからである。教育継続のための安全性が充分な学校法人はこの比率が「0」であってもよいし、逆に安全性が充分でない学校法人は極めて高い比率を求められる。借入金が多額にあり、毎年毎年の返済額が多額に発生する学校法人はこの比率を高くした経営に徹しないと資金不足で返済不能となり、経営は破綻してしまうであろう。尤も新たな借り入れで資金をつなげば別である。また、資産再調達財源の留保が乏しい学校法人もこの比率が高いことが望まれる。留保資金の創出のためである。
<表計算・経営判断>では、そのために「危機判断」シートに<予測年数セル>や<将来予測値入力セル>を用意している。予測年数セルに例えば5年後と入力すると、以後5年間を1期間として支払資金状況やその他の安全性指標が表示されるようになっている。また、多額の施設支出・設備支出も反映することができるように配慮してある。これら将来数値の入力により安全性が良、支払能力に問題なしの結論が得られる採算性が当該学校法人にとって求められる帰属収支差額比率である。
6 支払能力の評価指標
貸借対照表分析における財務安全性は、一定時点における静態分析である。すなわち、一定時点における静態的な貸借対照表の資産及び負債を分析して、財務の安全性・長期の支払能力を検討したものである。しかしながら、学校の活動は日々動いており、その意味では静態的な見方には限界がでてくることは容易に推測できよう。
したがって、これらを考慮した分析…変動分析が求められ、具体的には資金運用表、資金移動表の作成として実施される。また、資金運用表より簡便な動態資料としては貸借対照表の期間比較による変動分析が実施されることもある。
これら変動分析により、静態分析である安全性分析を資金の動きの上から補完して動態分析である安全性分析として、情報を充実させていくのである。
なお、学校法人の場合、学校法人会計基準により資金収支計算書の作成が求められているため、資金運用表・資金移動表の作成を省き、資金収支計算書の分析に限るのが有効である。ただし、学校法人会計基準の資金収支計算書は資金の包括的収支表であることに注意したい。学校の活動は、すべて教育研究のための活動であることは当然であるが、この活動を教育に直接的に関係ある活動、教育研究活動に間接的に関係ある活動及び資金調達活動と三つの活動に区分してみると分析上有益である。直接的な活動を経常活動、間接的活動を経常外活動、そして資金調達活動はそのまま資金調達活動と呼び、それぞれの収支を個別・総合で評価したい。学校法人会計基準におけるいずれの収支科目が、これらいずれの活動に合致するかは甚だ難しく、それについては個々の法人が自己の収支内容をよく実態把握の上決定すべきである。
分析には、比率が付きものである。上記のように区分した資金収支計算書における経常活動の「収入・支出の割合」が経常収支比率と呼ばれる比率であり、これを<表計算・経営判断>では短期の支払能力の判断指標として取り上げている。
経常収支比率は、経常的な収入が経常的な支出をどの程度カバーしているかを見る指標であるから、少なくともその比率は100%以下であることが望まれる。100%超の場合は、経常的な収入で経常的な支出をカバーできない状況であるので、その不足分をどのような収入でカバーしているかに充分意を払わなければならない。
むすび
以上、質問に答える回答を簡略ではあるが記述した。学校法人の永続性判断のための総合判断指標の意味合いとその捉え方を今一度吟味して、これからに向かっての経営の参考にして頂ければ幸いである。
なお、平成19年8月号の<表計算・経営判断>にその後手を加えたものを私のHPにアップしているので、本稿同様にご利用戴きたい。<http://www.zenkyu.jp>を開き、左上の[著書:論文]をクリック、本稿タイトルに添付してある<表計算ソフト・経営判断>をダウンロード願いたい。
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