| 監事の監査報告書(3) 【監査対象とした計算書類の範囲記載】 平成17年3月28日 公認会計士 山口善久 1 委員会報告と告示 監査報告書に、監査対象とした計算書類の範囲を記載する場合にはどのような記載とするのだろうか。 私たちがよく目にする監査報告書としては、私立学校振興助成法に基づく公認会計士又は監査法人の監査報告書がある。それにおける計算書類の範囲の記載は次のようである。 「 平成○○年度(平成○○年4月1日から平成○○年3月1日まで)の計算書類、すなわち、 資金収支計算書(人件費支出内訳表を含む。)、消費収支計算書及び貸借対照表(固定資 産明細表、借入金明細表及び基本金明細表を含む。) 」 これは、日本公認会計士協会の学校法人委員会報告第36号が定めたものであるが、文部科学省が監査対象と定めた計算書類の定めとはその表現に違いがある。 文部科学省の定めは、昭和51年7月13日付け 文部省告示第135号にあり、その記載は次のようである。 「 財務計算に関する書類(資金収支内訳表及び消費収支内訳表を除く。)」 |
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なお、上記の「財務計算に関する書類」は、昭和51年7月28日付け文管振第215号通知で「計算書類」と呼び変えられているので、以下「計算書類」ともいう。 | |||
| 告示は、資金収支内訳表及び消費収支内訳表を除いた財務計算に関する書類を監査対象とするとしているが、日本公認会計士協会の委員会報告は、監査対象計算書類は同一としながらも除外計算書類を記載するのではなく監査対象計算書類を直接明示している。 2 監査対象計算書類の範囲 上記を受けてであろうか公認会計士が提案する監事の監査報告書の文例には、監査対象計算書類を列挙し、また、監査対象計算書類から資金収支内訳表と消費収支内訳表を除いたものがある。 資金収支内訳表と消費収支内訳表を除くことに係る監査対象範囲の両者の表現の違いは別にして、確かに私立学校振興助成法による公認会計士又は監査法人による監査範囲計算書類は上記1のとおりであり、その監査対象範囲から資金収支内訳表と消費収支内訳表を除外している。しかし、監事監査の根拠は私立学校法にあり、これによる監事の監査対象計算書類に除外計算書類があるのだろうか。 私立学校法第47条第1項は作成を義務づける書類を定めており、同条第2項はそれらを閲覧の対象としている。そして、文部科学省は、学校法人会計基準に基づき計算書類を作成している学校法人の場合、この閲覧対象書類のうちの計算書類については、学校法人会計基準で作成する計算書類を私立学校法で作成を義務づけている計算書類として扱うことを認めるが、閲覧対象としてはそれらの計算書類の一部である資金収支内訳表と消費収支内訳表を閲覧対象計算書類に含めなくともよいとしている(H16.7.23「16文科高第304号」)。 では今一度問うが、これらの取扱いと同様に私立学校法第37条に基づき監査する監事の監査範囲からこれらの内訳表を除いてよいのであろうか。今検討してきた点は外部監査に関しての定めや閲覧計算書類に関する取扱いであり、内部監査について同様の扱いをする必然性はない。さらに、所轄庁たる文部科学省や都道府県に提出している計算書類を監事が監査しないという考え方が導かれることは、法の趣旨からして決してあるべきではない。したがって、学校法人が作成する計算書類はすべて監事の監査対象書類であるとすべきであり、外部監査や閲覧・公表計算書類の限定とは別に解すべきである。 |
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私立学校法第47条(財産目録等の備付け及び閲覧) 学校法人は、毎会計年度終了後二月以内に財産目録、貸借対照表、収支計算書及び事業報告書を作成しなければならない。 2 学校法人は、前項の書類及び第37条第3項第3号の監査報告書(第66条第4号において「財産目録等」という。)を各事務所に備えて置き、当該学校法人の設置する私立学校に在学する者その他の利害関係人から請求があつた場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならない。 |
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3 附属表の記載 以上を受けて監査対象計算書類を学校法人が作成するすべての計算書類とした場合、監事の監査報告書における監査範囲記載で主要計算書類のほか内訳表や明細表である附属表までをすべて列挙しなければならないのか。 多分内訳表や明細表を含めてすべて列挙するという考えは、上記の公認会計士又は監査法人の監査報告書の記載「平成○○年度(平成○○年4月1日から平成○○年3月1日まで)の計算書類、すなわち、 資金収支計算書(人件費支出内訳表を含む。)、消費収支計算書及び貸借対照表(固定資産明細表、借入金明細表及び基本金明細表を含む。) 」や企業における公認会計士又は監査法人の監査報告書に「○○株式会社の平成×年×月×日から平成×年×月×日までの第×期営業年度の計算書類、すなわち、貸借対照表、損益計算書、営業報告書(会計に関する部分に限る。)及び利益処分案並びに附属明細書(会計に関する部分に限る。)について監査を行った。」で、附属表もその監査対象として記載されているからと思われる。 しかし、私立学校振興助成法の監査で内訳表や明細表が監査対象として明記されているのは学校法人会計基準で定められている内訳表や明細表のうち一部が監査対象から除かれているからであり、また、企業に係る監査で附属明細書が監査対象として明記されるのは、商法の定めを見れば明らかなように附属明細書は貸借対照表や損益計算書といった計算書類との関連はあるがそれらの計算書類とは異なった独立の書類として位置付けられ作成されているからである。これに対し、学校法人会計基準に基づいて作成される計算書類は、学校法人会計基準第4条の定めからして分かるように内訳表や明細表の附属表はすべて本体の計算書類に含まれているものであり、商法の定めのように別個の計算書類として位置づけられてはいない。 したがって、監事の監査報告書では本体計算書類を監査対象として記載すれば、それだけで附属表は監査対象計算書類として含められているものと思料する。ただし、これは全ての計算書類の列挙記載を否定するものではないことは付言しておきたい。 |
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学校法人会計基準第4条 学校法人が作成しなければならない計算書類は、次に掲げるものとする。 一 資金収支計算書及びこれに附属する次に掲げる内訳表 イ 資金収支内訳表 ロ 人件費支出内訳表 二 消費収支計算書及びこれに附属する消費収支内訳表 三 貸借対照表及びこれに附属する次に掲げる明細表 イ 固定資産明細表 ロ 借入金明細表 ハ 基本金明細表 |
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| 商法第281条 取締役は毎決算期に左に掲ぐるもの及其の附属明細書を作り取締役会の承認を受くることを要す 一 貸借対照表 二 損益計算書 三 営業報告書 四 利益の処分又は損失の処理に関する議案 |
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| 4 収支計算書と資金収支計算書・消費収支計算書 上記3の検討は、私立学校法第47条では「財産目録、貸借対照表、収支計算書及び事業報告書」を作成する書類としているのであるから、監事の監査対象とする書類の範囲も同一であるとする前提をとりながら、その監査報告書における監査範囲限定を「財産目録、貸借対照表、資金収支計算書、消費収支計算書及び事業報告書」と置き換えてなされている。 |
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| 収支計算書の資金収支計算書及び消費収支計算書への置き換えそのものは、平成16年7月23日文部科学省私学部長通知「16文科高第304号」により「収支計算書は、基本的に資金収支計算書及び消費収支計算書がこれに該当するものであること。」とあること、そして、この通知が財務情報の公開に関してのものであっても、これを学校法人の作成書類に関する取扱いとしても何らの問題はない。 | ||||
| では、監事の監査報告書は、監査範囲限定に関して「……資金収支計算書、消費収支計算書……」と記さなければならないのであろうか。計算書類とその監査報告書が袋綴じされる公認会計士又は監査法人における監査のような場合には監査報告書に記されている計算書類の名称と添付されている計算書類の名称が同一の方が望ましいといえようが、監事の監査報告書は私立学校法第47条の定めによる監査における監査報告書であり、かつ、そこではその書類を具体的に指定しているわけでもなく、また、その監査報告書は監査対象の財務書類と袋綴じをされるものでもないので、「……収支計算書……」の記載でよいものと思料する。 | ||||
| 私立学校振興助成法第14条 | ||||
| 第4条第1項又は第9条に規定する補助金の交付を受ける学校法人は、文部科学大臣の定める基準に従い、会計処理を行い、貸借対照表、収支計算書その他の財務計算に関する書類を作成しなければならない。 2 前項に規定する学校法人は、同項の書類のほか、収支予算書を所轄庁に届け出なければならない。 3 前項の場合においては、第1項の書類については、所轄庁の指定する事項に関する公認会計士又は監査法人の監査報告書を添付しなければならない。ただし、補助金の額が寡少であつて、所轄庁の許可を受けたときは、この限りでない。 |
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