会計基準基本金改正案(2)
平成16年3月20日
消費収支計算書は、学校法人会計基準第15条によると「毎会計年度、当該会計年度の消費収入及び消費支出の内容及び均衡の状態を明らかにするため」に作られる計算書とされている。
また、学校法人会計基準の基になったと思われる1968-1969年度の日本会計研究学会(スタディ・グループ学校法人会計)の「学校法人会計の基本問題中間報告」では、その計算体系で「消費収支計算とは、資産もしくは用役の消費額(もとよりいわゆる資本的支出は含まないが、減価償却費を含む)、すなわち消費支出と、その填補に充当できる収入、すなわち消費収入とを対比し、両者の均衡の有無を明らかにするための計算をいう。………略………。消費収支計算における『消費収入』および『消費支出』は、直ちに連想されるように、企業会計の損益計算における『収益』および『費用』に類似する。………略………。このように、学校法人会計に援用しようとするのは、企業維持の要請にこたえる損益計算の計算構造であり、したがって、消費収支計算は、損益計算における差額の多寡の測定に主眼があるのではなく、あくまでも、消費額とこれに充当しうる収入額との均衡の有無を測定することに目的がある。」としている。
これらを受けて、会計的には、消費収支計算書は企業における損益計算書と同じ範疇にあるものと、計算書類の読み手は理解されてきたものと思う。
しかし、学校法人会計基準は、第16条で、消費支出を填補すべき消費収入を帰属収入から基本金組入額を控除して算出するとしたことによって、計算書類の読み手の消費収支計算書=損益計算書という考え方とはストレートで同一の計算書にはなっていない。
そして、これが今となっては、企業会計の財務諸表の読み手が学校法人会計の計算書類を読んで、学校法人会計基準における消費収支計算書はよく解らない、そこで算出される消費収支差額は何を物語っているのかなどといっているのだと推測する。
そしてこの意見は、学校法人会計基準の計算体系が、「資金収支計算」「消費収支計算と貸借対照表」となっていることからして、企業会計の立場からは、正にその通りといわねばならないであろう。
今回の学校法人会計基準の見直しは 、正にこの点に重点を置くべきだと考える。
しかし、この点における解決を今回の見直しで行わず、他の見直しのみで終えるのであれば、学校法人会計基準の消費収支計算書における当期消費収支差額が何を物語るかを、計算書類の読者に明らかにすることが必要である。
要は、貸借対照表と一体となった計算書類はいかなる名称で呼ぼうと企業会計的には損益計算書であり、よって学校法人会計基準における消費収支計算書は損益計算書と同じような立場で読み手に提供されなければならない。そして、それに学校法人会計の特性である基本金の考え方を如何に位置付けるかである。
この方策にはいくつかの方法があり、決して一つだけにその方法が帰結するわけではない。一つめの方策は、帰属収入から控除すべき基本金組入額と帰属収入から控除する基本金組入額を同額として、基本金組入額を消費支出に対応すべき消費収入に喰い込ませない方法であり、これについては既に提案済である。
この提案は、基本金組入れの段階で企業会計でいう資本金を限定し、その後学校法人の判断でいわゆる剰余金の資本金化を図る考え方である。
二つめの方策は、帰属収入から控除すべき基本金組入額を現行学校法人会計基準のとおりとするが、消費支出に対応すべき消費収入に喰い込むものを未組入れとし、さらにその未組入額の組入れにもこの考えをキチンと受け継いでいく方法である。
三つ目の方策は、帰属収入から控除すべき基本金組入額を現行学校法人会計基準のとおりとするが、消費支出に対応すべき消費収入に喰い込むものを消費収支計算書の表示において解決する方法である。すなわち、昭和51年の日本公認会計士協会提言により解決する方法である。
この提案は、基本金組入れの段階では企業会計でいう資本金を広く扱い、その後後述する基本金の取り崩しの許容により学校法人の判断で資本金を減額していく考え方である。
以上三つの提案をしたが、いずれの方法でも良いと考える。
ただし、いずれの方法でも、現行学校法人会計基準における基本金組入れ計算において消費支出に対応すべき消費収入に喰い込むものとは何かについて検討が必要である。
さて、上に当該年度の消費収支差額が損益計算書の当期損益と同じように扱われる方法を三つ提案したが、いずれもその考え方の根底は同じである。
一つ目の提案が現行の定めとあまりにも異なりすぎるとの意見があるようなので、後の二つの提案を追加したのである。
一つ目の提案も決して突飛なことを提案したわけではなく、見直しの観点で重要だとした当該年度の消費収支差額の損益計算書化を目指す限りこうならざるを得ないのである。
そして、二つ目、三つ目も一つ目が姿を変えているものに過ぎない。
しかし、二つ目の提案は、いわゆる剰余金による基本金組入れができないので、多分未組入額は未組入のまま長い期間放置されるであろうことからして実務上は問題が残る。
次に取り崩しについて
学校法人会計基準における基本金の取り崩しは、計算書類の表示の上からいうと当年度の消費収支差額を算出した後に控除される。よって、組み入れに際して検討されたような問題はない。そして、貸借対照表においても、基本金から翌年度繰越消費収支差額への振り替えに過ぎないことから、取り立てて是か非を述べるまでもない。
ただ、基本金の組入れ(設定)において「学校法人が学校を運営していくために必要な基本的な資産は、学校が存立している限り、当然、継続的に保持しなければならないものである」とした基本金の大前提との間でこの取り崩しをどう説明するかについては充分な検討が必要であろう。
そして、この検討から導き出される結論次のようになろう。
単に「学校法人が基本金の対象となる事業の見直しを行った場合には、見直しを行った事業にかかる基本金を取り崩す」といっただけの考えでは不十分であり、取り崩すことができない基本金をキチンと定めた上での取り崩し許容とすべきである。
例えば、学校法人設立に際して準備された資産にかかる基本金の取り崩しは認められるのか(財団法人でいうと基金の取り崩しになる。)。租税特別措置法第40条が適用された資産にかかる基本金の取り崩しは認められるのか。明らかにすべきであろう。
以上の主張をより鮮明にするため、いくつかの事例について以下に検討する。
(1) 2号基本金の設定は、計画的に行われるようにされているが、その財源を特別寄附に求めているときの次年度以降の組入れにあたっては、当年度の収入額が予定より大きい場合はその収入額を組み入れ、当年度の収入額が予定より小さい場合には収入額のみを組み入れ、その不足額を自動的に次回の組入予定額に加算する取り扱いが現在されている。正に、この処理は当該年度の帰属収入を意識しているのではないだろうか。何故、この考え方を他に適用していかないのであろうか。
(2) 2号基本金に関わる問題だと思うが、募集寄附という形ではなく固定資産を取得すべきとして受け入れた寄付金があり、2号基本金の計画がされていないとき、あなた(学校)はどう処理しますか。このとき、公認会計士のあなたは学校にどのように指導しますか。
(3) 2号基本金−前年度までに累積している預金を2号基本金として設定した。したがって、帰属収入から控除して消費収入を算定しますが、これについてあなたは消費収支計算の上からどう考えますか。
これと同じような事例に消費支出準備金がありますが、この準備金の設定による消費収支計算書での処理は当年度の消費収支差額を算出した後にされていますが、これとの関連で先の2号基本金の処理をどう考えますか。学校法人会計基準にはキチンと年度の帰属収入の思考があると思いませんか。
私の前に示した基本金処理は前年度までのいわゆる累積剰余金ですが、消費支出準備金は当年度末までのいわゆる累積剰余金です。現行の学校法人会計基準とあまり離れない処理をということでしたら、これに合わしても良いと思います。
(4) 1号基本金−固定資産を取得したが、これの財源は前年度までのいわゆる累積剰余金である。帰属収入から控除して消費収入を算定しますが、これについてあなたは消費収支計算の上からどう考えますか。
(5) 以上いくつかのケースを今一度ここで纏めます。
基本金対応資産を取得(認識)したときの源泉となる収入は当然帰属収入ですが、この帰属収入には、(イ)前年度までの帰属収入、(ロ)当年度の帰属収入、(ハ)次年度以降の帰属収入 の三つがあります。
基本金対応資産の取得と源泉収入との関連を、消費収支計算の上からあなたはどう考えますか。