平成13年11月9日
学校法人の分離・分割及び合併の会計処理について              
                         公認会計士 山 口 善 久
 
1 序
 学校法人の経営危機が叫ばれるとともに、その回避手段として分離・分割及び合併が注目されてきている。そして会計面からするとこれをどう処理していくかが問題となるということで、これに関する話題があちらこちらで取り上げられてきているようである。
そこで、これに関する私の見解を次に纏めてみたい。
 
2 分離・分割及び合併の定め
 先ず指摘しておきたいのは、分離・分割には制度面での定めがないということである。したがって、これから特別に制度面での整備をするのでなければ、現行の定めによって分離・分割に係る手続きを行っていかなければならない。
 では、私立学校における分離・分割はどのような手法で処理されるのであろうか。先にも述べたように分離・分割について特別の定めが私立学校法等にないのであるから、現行の学校法人の設立の手続きを利用してこれらを処理しなければならないであろう。そして、これを所轄庁である文部科学省等が認めるか否かは、現時の学校法人や学校の設立若しくは廃止における判断と同様でなにもこの分離・分割に限るものではない。
 なお、合併については私立学校法にその定めがあるので、それに従うことになる。
 
3 分離
 分離は学校法人が経営する学校を切り離し他の学校法人に移管することをいう。
よって、分離による学校の移管は、移管元法人にとっては移管学校に係る財産の移管先法人への贈与であり、これに負債が伴う場合は負担付き贈与である。
 一方、移管先法人は贈与財産(若しくは負担付き贈与財産)の受け入れである。
 そして、分離される学校の設置者変更の手続きが求められる。
 
4 分割−分割法人がいずれも新設法人の場合
 この場合の分割は当該学校法人を分割しその分割法人に経営する学校を移管することをいう。
 よって、旧学校法人にとっては、所有財産の分割法人への贈与であり、これに負債が伴う場合は負担付き贈与である。そして、当該学校法人の解散申請である。
 一方、分割法人は贈与財産(若しくは負担付き贈与財産)の受け入れ(このときまだ分割法人は法人格がないので財団法人の設立が伴う)であり、新たな学校法人の設立認可申請である。
 そして、分割される学校の設置者変更の手続きが求められる。
 
5 分割−存続法人と新設法人の場合
 この場合の分割は当該学校法人を分割しその分割法人に経営する一部の学校を移管することをいう。
 よって、存続法人にとっては、財産の分割法人への贈与であり、これに負債が伴う場合は負担付き贈与である。一方、新設法人は贈与財産(若しくは負担付き贈与財産)の受け入れ(このときまだ新設法人は法人格がないので財団法人の設立が伴う)であり、新たな学校法人の設立認可申請である。
 そして、分割される学校の設置者変更の手続きが求められる。
 
6 分離・分割に係る会計処理
 3,4,5と分離・分割についてその手続きをみてきたが、いずれも現時において採用されている手段であり、当然のことに既に会計処理がなされているものであり、よって、特段の検討が必要とは思われない。また、このことは基本金についても同様である。
 
7 合併
 合併は、複数法人の経営する学校を一法人に移管することをいう。存続法人として新設法人の場合と現存法人の場合とがある。
 合併は、分離・分割と異なりその手続きについて私立学校法に定めがあるのでそれに従うのであるが、会計処理については私立学校法及び学校法人会計基準のいずれにも定めがない。したがって、これについてはどのような処理をするかを検討しなければならない。この点分離・分割とは異なるところである。
 合併に係る合併受入資産の評価について時価であるとか簿価であるとか、企業会計ではこのようにされているとか様々な意見があろうが、合併以外の平生の会計処理において企業会計とは異なった思考でなされている学校法人会計で企業会計の処理方法に引きずられる所以は些かもないことを強調しておきたい。いずれの会計処理であっても私立学校法や学校法人会計基準の趣旨に基づいての処理を定めればよいのである。
 企業の会計は昨今ますます時価に引きずられている。しかし、学校法人会計基準は時価を主体とした会計ではない。よってこれを基に思考し、合併受入資産を時価若しくは簿価で計上することの得喪を検討すべきである。ただし、簿価を採用した場合には法人の将来の継続のために含み損の計上のみは排除すべきである。
 また、基本金として如何ほどの金額を計上するかにあたって検討すべきことに、差損若しくは差益の計上を認めるかということがある。
 例えば、受入資産と受入負債が同額の場合に基本金を計上すると差損を計上するか、若しくはのれんを認識しのれんの金額を計上することになる。しかし、学校法人会計基準にはのれんの資産性が疑わしく、よって、結果として差損の計上のみの検討ということになる。だが、これも新しい体制の設立の際に差損の計上は多分困難であり、よって基本金は受入資産と受入負債の差額の計上ということになろう(差損の計上も差益の計上も考慮しない。この場合、基本金の計上はない)。
※ 負債超過の合併は認可されるか。−分離、分割のあたっても同様。
※ 時価評価をして、その時価までの基本金を計上すると加重負担にならないか。
  ※ 簿価を主体に時価までの評価増を認める。
8 結び
 以上、分離・分割及び合併についての会計処理の入り口の考え方を披露させていただいた。私学の経営が再生されることを祈って結びとしたい。